【シビックらしさ】新型は失われたのか? いい所、気になる所

公開 : 2021.08.15 08:45  更新 : 2021.12.13 21:24

日本市場に向けた決意表明

インパネは低めの水平基調で、上にメーターとディスプレイ、下にスイッチやコンソールを配したわかりやすいレイアウトだ。

それでいて全幅にわたるメッシュのパネルは、オーディオブームとともに成長していったシビックにふさわしいし、エアコンのコントローラーはダイヤル式とするなど、なんでもタッチスイッチにしない姿勢も評価できる。

新型シビックEX(内装色ブラック×レッド/6MT)
新型シビックEX(内装色ブラック×レッド/6MT)    宮澤佳久

メーターが10.2インチ、センターが9インチのデジタルディスプレイになったことも新型の特徴。

特に目立つのはセンターで、先代は社外品のナビを埋め込んでいたが、今回は見やすく扱いやすいアイコンを含め最新のホンダスペックになった。日本でも本気でシビックを売っていこうという決意表明と受け取った。

走りについては、先代もCセグメントで輸入車を含めてもトップレベルにあると思ったので、そのままでもいけそうだと思っていたが、資料を見ると各所に手を入れてきたことがわかる。

1.5Lのターボエンジンは、182psの最高出力、24.5kg-mの最大トルクは変わらないものの、クランクシャフトとオイルパンの高剛性化、VTECやターボ、排気系の改良などを実施している。このあと2022年にはハイブリッドとタイプRの投入も明言されている。

CVTはトルクコンバーターを大容量化したうえで、さらなる高精度制御を採用。

日本でも約3割のユーザーが選んだという6速MTは、シフトレバーの支持剛性強化とともにシフトストローク5mm短縮などを行っている。

300万円オーバーへの賛否

ボディは構造用接着剤の適用を先代の9.5倍に拡大するなどして、ねじり剛性を先代比で19%向上。フロントフードをアルミ製、リアゲートを樹脂製とすることで軽量化にも配慮している。

マクファーソンストラット式フロントサスペンションはサブフレームのリアメンバーにアルミを採用。マルチリンクのリアサスペンションはロアアーム支持点に新ブッシュを用いるとともにバネ特性を適正化するなどしており、 ステアリングはアシストモーターの制御を高精度化している。

新型シビックEX(プラチナホワイト・パール/6MT)
新型シビックEX(プラチナホワイト・パール/6MT)    宮澤佳久

ホンダセンシングと呼ばれる先進運転支援システムは、自動運転レベル3の機能を搭載したレジェンドの経験を活かし、標識認識機能の地図との連携、ホンダ初のアダプティブドライビングビーム、シビック初の渋滞運転支援機能を採用した。

このようにデザインやエンジニアリングのみならず、日本仕様の仕立てにも力が入っている新型シビック。気になるのは価格もレベルアップしたことで、319万円スタートとなった。

カローラスポーツやマツダ3は200万円台前半からあり、大幅値上げした新型ゴルフでさえ300万円以下のベースグレードを用意してきたのとは対照的だし、300万円というのは個人的な経験に照らし合わせても、クルマを買うときのボーダーラインの1つだと思っている。

ただ広さはこのクラスのハッチバックでは最大級だし、デザインは洗練され、走りは期待を裏切らないはず。SUVでは味わえないスポーツマインドを備えたファミリカーになっていそうな気がする。

それにガソリンエンジンをMTで操るシビックはこれが最後になるかもしれないことは、頭に入れておいたほうがいい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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