【ゲイドンの救世主】ジャガーXK8、XKRとXKR-R 3台を比較 誕生25周年のX100系 前編
公開 : 2021.09.05 07:05 更新 : 2021.09.06 15:27
誕生から25周年を迎えた、コードネームX100として開発されたXK。誕生25周年を記念し、英国編集部がXK8とXKR、XKR-Rの3台を比較試乗しました。
ブランドの未来を指し示したX100系
英国ゲイドンのジャガー本社のどこかに、額装されたXK8の肖像画が保管されているに違いない。ジャガーのグランドツアラーとはどうあるべきか、ブランドの未来を明確に指し示した記念すべきモデルだから。
異世界からやって来たような不完全なスーパーカー、XJ220の数年後に発表されたモデルだが、オリジナルはそれより古い。タイムレスなデザインで、1996年から2006年までの10年間、ほぼ姿を変えずに販売が続いた。
コードネームX100として開発されたXK8は、美しいまま時を重ねている。では、動的性能は老化しただろうか。今回はXK8の発売25周年を記念し、ジャガー・クラシックが管理するフェンエンドのテストコースへ、特別な3台をお招きした。
集ったのは、X100系の初期に当たるXK8クーペと、チューニングを受けた後期のXKRのコンバーチブル。そして、ジャガーのスペシャル・ビークル・オペレーションズ(SVO)が手掛けたスーパーXK、XKR-Rのプロトタイプもやって来た。
X100系のXKシリーズは、直近30年のジャガーでとりわけ魅力的で能力に長け、商業的な成功を収めたモデルの1つ。完全に民営化された1984年以降、不安定な財政状態が続いていたジャガーを打開したモデルでもある。
国営企業のブリティッシュ・レイランド傘下にあった影響で、低い生産性という体質から抜けられずにいた。品質も褒められたものではなかった。
1986年に発売された4ドアサルーンのXJ40は複雑で効率が悪く、ジャガーを立て直すには至らなかった。むしろ、旧式化した技術を浮き彫りにした。
ジャガー独自の新ユニット XJ-V8
1991年末、ジャガーの損失額は221万ポンドにまで膨れ上がっていた。前年の3倍以上という、目も当てられない状況だった。そんな混沌とした中で、フォードが救いの手を差し伸べる。
その力を借り、救世主としてX100が誕生する。同じくフォード傘下に収まったアストン マーティンでは、DB7を名乗ったクーペだ。
このルーツは、過去に棚上げされていたXJ41へさかのぼる。寿命を迎えるXJ-Sの後継として、1980年代初頭に開発がスタートしたプロトタイプだ。とはいえ、X100の開発も簡単には進まなかった。世界的な不況とは、ジャガーも無縁ではなかった。
1992年3月、X100のデザインが本格的にスタート。デザインスケッチの後、工業用粘土で成形するクレイモデルが造られ、スタイリングの検討が進められた。
車両の技術開発担当者としては、ランドローバーでエンジニアを務めた経験を持つボブ・ドーバーが着任。しかし、英国政府との財政問題が解決せず、順調とはいえない状況が続いた。
フォードによる資金供出とモデル開発の承認は翌年へ持ち越されるが、最終的に英国東部、ブリジェンド工場へ100万ポンドの投資が決定。新しいグランドツアラーへは、北米産の既存ユニットではなく、ジャガー独自の新開発ユニットの搭載が決まる。
XJ-V8と呼ばれる、4.0LのV型8気筒エンジンだ。これは英断だったといえる。オーバヘッドの4カムで、1気筒毎に4本のバルブを備える、宝石のようなユニットが生まれるのだから。