【ゲイドンの救世主】ジャガーXK8、XKRとXKR-R 3台を比較 誕生25周年のX100系 前編
公開 : 2021.09.05 07:05 更新 : 2021.09.06 15:27
Eタイプとの結びつきを強く感じる
初期のXK8では、自然吸気で最高出力294ps、最大トルク40.0kg-mを発揮。0-97km/h加速を6.5秒でこなし、最高速度は249km/hでリミッターが掛かるという、不足ない速さを得た。
スペックやパフォーマンスだけではない。初期のXK8には、ドライビング体験を深いものにするような、堂々とした味わいがある。
走行中にアクセルペダルを踏み込むと、現代のメルセデス・ベンツにも引けを取らないほどスマートにATがキックダウンする。驚くほど勇ましくフロントが上を向くものの、滑らかにパワーがリアタイヤへ伝わる。
サスペンションはとてもしなやか。乗り心地はシルクのようにスムーズ。気持ちを荒げるような素振りは殆どない。
軽くない車重を指摘する人もいるだろう。確かに、充分にダイエットできていれば、妖艶なスタイリングにぴったりなスポーツカー体験が得られたかもしれない。しかしXK8は、伝統的な英国のグランドツアラーとして見るべきだろう。
路面の隆起やくぼみを、車重を生かしてローラーを掛けるかのようにフラットにいなす。ベースを同じにするアストン マーティンDB7の方が、その特長は強いけれど。
XKというモデル名は1948年の2シーター・スポーツカー、XK120を由来とする。しかしスタイリングとしては、マルコム・セイヤーの傑作、ジャガーEタイプとの結びつきを強く感じさせる。
10年を通じてほぼ変わらなかったフォルム
落ち着いたフォルムをベースに、大きくカーブを描くラインと、ふくよかな面構成がEタイプの特長だった。50年の時を経て、そのスピリットがXKに宿っていることは間違いないだろう。
同時期の当たり障りのないデザインの日本車や、フラットな面構成のE31型BMW 8シリーズなどと並ぶと、洗練されたXK8の容姿は一層引き立って見える。有機的で、空力特性にも優れていそうな、セクシーで柔らかい曲面が美しい。
デザイン・ディレクターを努めたジェフ・ローソンは、当時のジャガーとして独自のアイデンティティを築き上げた。しかし、魚が口を開けたような楕円のフロントグリルや、膨らんだフェンダーラインに収まるタイヤなど、祖先の面影は明らかだ。
10年間に及んだモデルライフを通じ、ブラウンズレーンを旅立った初期のXK8から、最後にラインオフしたXKRコンバーチブルへX100は進化を続けた。それでも、フェンエンドで見る2台は驚くほど似ている。
ソフトトップであることを除き、全体的なフォルムはほぼ変化していない。唯一、2002年に施されたマイナーチェンジを経ているくらい。
フロントバンパーは手直しを受け、テールライトはキラキラとしたカットが追加され、クロームで縁取られている。ヘッドライトはキセノンになり、エンブレムが新しくなり、アルミホイールはギラギラと成長している。でも、ボディラインはそのままだ。
ボディの内側へは、大きな改良が施された。電子制御のスタビリティ・コントロールや緊急ブレーキ・アシストを獲得し、フロントシートはずっと快適性を高めてある。
この続きは後編にて。