【売れ行き倍増】三菱エクリプス・クロス 地味に最近「売れている」背景

公開 : 2021.08.19 05:45  更新 : 2021.10.22 10:07

良い意味で古典的 デザインと走り

エクリプス・クロスのデザインや運転感覚は、良い意味で古典的だ。

操舵感が機敏で良く曲がり、運転の仕方によっては、後輪を横滑りさせようとする。

三菱エクリプス・クロスPHEV
三菱エクリプス・クロスPHEV

今のクルマは安全性を重視するので、足まわりの設定も、運転操作が難しい状態に陥らないよう後輪の接地性を最優先させる。

そこがエクリプス・クロスでは、グリップバランスが少し前輪寄りになるのだ。

例えば新型トヨタ86は、良く曲がって相対的に後輪の接地性が下がることもあるが、一種の演出として作為的におこなっている。

これでは興ざめと受け取るユーザーもいるが、エクリプス・クロスは違う。

このプラットフォームは初代(先代)アウトランダーに採用された時からグリップバランスが前輪寄りで、2代目の現行アウトランダーは安定指向にあらためたが、エクリプス・クロスは曲がりやすいセッティングを受け継いだ。

そしてエクリプス・クロスのクリーンディーゼルターボでは、ボディの前側が重く、曲がりやすさが裏目に出てしまった。

後輪の接地性を大幅に悪化させたので、エクリプス・クロスPHEVでは足まわりの設定をあらためて見直した。

その結果、安定性を著しく損なわない範囲で、古典的なスポーティ感覚を味わえる走りに落ち着いた。

コアな話になったが、このような経緯を辿って走りの個性を洗練させたクルマは少ない。

86のような演出ではなく、通常の進化を経た結果、適度に機敏で良く曲がる運転感覚に至っている。だから走らせると奥の深さが感じられ、離れられなくなるのだ。

また販売店では、前述のとおり「アウトランダーPHEVから、エクリプス・クロスPHEVへの乗り替えも生じている」という。

かなりのサイズダウンに思えるが、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値は、アウトランダー、エクリプス・クロス、RVRの全車が2670mmで共通だ。

そのためにアウトランダーとエクリプス・クロスを比べると、荷室の奥行寸法は異なっても後席の足元空間に大差はない。

エクリプス・クロスも4名乗車が快適で、無理のない乗り替えをおこなえる。

以上のようにエクリプス・クロスには、ほかのSUVとは違う独特の価値があり、アウトランダーPHEVからの乗り替えも生じて、売れ行きを伸ばした。

しかしそれにしても、前年の4倍から7倍といった売れ方は過剰ではないのか。

背景にはエクリプス・クロスの魅力とは別の理由もあった。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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