【静寂な空間で際立つ】変わるクルマとスピーカーの関係 電気自動車でさらに
公開 : 2021.08.18 05:45 更新 : 2021.10.20 17:32
アリア 「サウンドフィロソフィー」体現
BOSEの創始者、アマーGボーズ博士は、リスナーとスピーカの位置関係が常時固定されている車内環境を逆手に取り、それぞれのスピーカからの直接音や反射音を緻密に測定して制御、きわめて安定したリスニング環境を構築できることに着目した。
また、適切なスピーカー配置と信号処理やイコライザを組み合わせ、BOSEは、他社に先駆け、車種ごとに専用設計し音響チューニングを施したサウンドシステムを世に送り出した。
日産アリアでは、10スピーカーの「BOSEプレミアムサウンドシステム」が搭載される。
それぞれのスピーカーの種類と設置場所は次のとおり。
・ダッシュボード左右コーナー:65mm中高音域用スピーカー×2
・左右ミラーパッチ:19mmネオジウムツィーターx2
・左右フロントドア:165mmウーファーx2
・左右リアドア:130mmネオジウムワイドレンジスピーカーx2
・リアカーゴ:アクースティマス ベースボックス 115mmウーファーx2
特徴は、フロントの3対のスピーカーが、低域/中域/高域にそれぞれ分かれたフロント3ウェイ構成であることと、アリアの車室にあわせてスピーカーレイアウトを最適化したこと、音響チューニングにより4席すべてで自然なサウンドステージが体験できるようにしたこと。
また、広い放射角のツィーターを対向配置し、左右のバランスを取った自然なサウンドフィールドと、アクースティマス ベースボックスがもたらすリッチな重低音も特徴とのこと。
しかし、10スピーカーとは、プレミアムオーディオとしては数が少なめでセンタースピーカーもない。
スカイライン現行モデルの「BOSEパフォーマンスシリーズサウンドシステム」では、16スピーカーでセンタースピーカーも備える。
ちなみに、ノート・オーラの「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」では、センタースピーカーがないかわりに、フロントシートヘッドレストに1対のスピーカーを備えている。
また、スピーカーの配置はフロントシート重視のような印象を受ける。
「スピーカー位置」でのせめぎ合い?
スピーカー数が多いほうがいい、というものではないことを重々承知しているが、ましてや、アリアは日産のEVのフラッグシップである。
このスピーカー構成について、鈴木氏にたずねてみると、「開発は日産と協力して念入りにおこなった結果、センタースピーカーなしの10スピーカーとなった。リアシートを含めて全席で最良の音となるようスピーカー配置を考え、チューニングした」とのこと。
リアシートで聴く音も、フロントシートと同様の高い音質を確保したようだ。
筆者はさらに「日産の開発陣とスピーカー位置について、せめぎ合うことはなかったのか?」と突っ込んで訊いてみたところ、「お互いに協力して開発した」という月並みな回答が返ってきたが、鈴木氏の表情からは、ひょっとしたら一筋縄ではいかなかったのでは? と感じた。
これは、邪推かもしれないが、BOSE社としてもEVでの開発は、まだまだ数が少ないうえ、今や日産のアイデンティティにもなったEVでかつフラッグシップモデルとなると、日産とBOSEの双方でさまざまな課題があったのだろうと推察する。