【原種の血統】ランドローバー・ディフェンダー110 X D300試乗 ディーゼルMHEVのもたらす「上質」

公開 : 2021.08.16 05:45  更新 : 2021.10.11 14:49

ディーゼルに心傾く D300の「マナー」

新型ディフェンダーの顕著な美点は2つあると思っている。

ランドローバーの原種の血統をしっかりと感じさせるスタイリングであること。

ランドローバー・ディフェンダー110 X D300
ランドローバー・ディフェンダー110 X D300    神村 聖

そして武骨なワークホースだった先代よりもカジュアルで軽快なドライバビリティを身に着けている点である。

以前、新型ディフェンダーのP300(4気筒のガソリンモデル)で感じた極上のドライブフィールは、今回初めてドライブしたD300(直6ディーゼルMHEV)にもたしかに受け継がれていた。

エンジンが2気筒ぶん長く重くなったこともあり、操舵フィールは少しだけ重厚になっていた。

一方リアアクスルの真上にコンバーターや48Vバッテリーを配して前後重量のバランスを取ることで、コーナリングにおけるヒラリヒラリという新型ディフェンダーを象徴する身のこなしは健在だったのである。

ガソリンのディフェンダー110しかドライブしたことがなかった時点では、少しだけ物足りない動力性能よりも軽快なハンドリングの方に心を奪われ「必要にして充分」と感じていた。

けれどより110シャシーと相性がよく、しかも上質なD300のマナーを体験してしまうと気持ちははっきりとディーゼルの方に傾いてしまったのだった。

ディーゼルMHEVで決まり 理想の110は?

ディフェンダー110の主役となるべきパワーユニット選びは、ディーゼルMHEVのD300で決まりだ。

とくにディフェンダー110を家族で使うステーションワゴンと捉えた場合、走行時の重量がグッと増すので、ディーゼルの優位がよりはっきりするはずだ。

ランドローバー・ディフェンダー110 X D300
ランドローバー・ディフェンダー110 X D300    神村 聖

また実際にD300で高速道路を流しているとガソリンよりも静かなほどだし(1000rpmちょっとで巡航)、WLTC燃費のデータでもディーゼルはとくに高速側の数値が優れている。

筆者は先に記したディフェンダー90のインプレッション記事で、3ドアのコンパクトなディフェンダーを「知的冒険者のためのオモチャ」と表現した。

これと同じような感覚で110を使いこなすのであれば、ガソリンのP300という選択もありだと思う。

構造的にシンプルで車重が軽いし、新車のイニシャルコストも抑えられるからである。

一方、今回試乗した最上級グレード(110X/1171万円)の装飾的な部分はあまり気に入らなかった。

バンパー下部やサイドシルまで塗られているのは本格オフローダーらしくないし、革シートや室内のウッド調の部品もディフェンダーのイメージにそぐわない。

個人的には最もベーシックなディーゼルモデルである754万円の110S D300にエアサスを追加したものこそ新型ディフェンダー110の理想的な仕様だと感じたのだった。

ランドローバー・ディフェンダー110 X D300のスペック

価格:1170万円
全長:4945mm
全幅:1995mm
全高:1970mm
ホイールベース:3020mm
車両重量:2420kg
パワートレイン:直列6気筒2993ccターボ
最高出力:300ps/4000rpm
最大トルク:66.3kg-m/1500-2000rpm
ギアボックス:8速オートマティック

ランドローバー・ディフェンダー110 X D300
ランドローバー・ディフェンダー110 X D300    神村 聖

記事に関わった人々

  • 吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。

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