【詳細データテスト】ポルシェ911 GT3 RS並みの走り 使い勝手は一歩後退 静粛性は皆無

公開 : 2021.08.21 20:25  更新 : 2021.09.05 20:03

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

992世代の911 GT3の外観には、歴代モデルにはなかったほどの威圧感がある。新たなスワンネックタイプのリアウイングはある種の美を感じさせるが、それでもヴィジュアル的な凶暴さは増している。速い911の外装は概してピュアであるべきだと考えるひとびとからすれば、空力的処置がアグレッシブすぎるということになるだろう。

このクルマのルックスがこんなことになったのは、もちろんダウンフォースを求めたから。リアウイングはピッチがアジャストでき、もっともマイルドな出荷状態でも、過去のGT3より50%強力なダウンフォースを生むのだ。ウイングをもっとも傾け、フロントスプリッターを一番効かせた場合、200km/h走行時に先代比150%増の400kg近い数値に達する。

スワンネック式リアウイングは、最新の911RSRレースカー譲り。ステーがウイングを上部から吊り下げる形式で、空力的に重要度の高いウイング下面に気流を阻害するブラケットを取り付ける必要がないので、より効率的に機能する。
スワンネック式リアウイングは、最新の911RSRレースカー譲り。ステーがウイングを上部から吊り下げる形式で、空力的に重要度の高いウイング下面に気流を阻害するブラケットを取り付ける必要がないので、より効率的に機能する。    LUC LACEY

ポルシェがボディワークにここまで手を加えられたのは、まずサスペンションの大改修をしたからこそだ。通常の992ではマクファーソンストラットとなるフロントサスペンションは、ロードカーの911では初となるダブルウィッシュボーンに換装。リアの5リンクは大幅に手直しし、四輪操舵への適応性を高めた。

前後とも、ハードなコーナリング時にホイールキャンバーの優れたコントロール性を維持する。また、傾斜したストラットの効果もあって、フロントはブレーキング時にきわめてダイブしにくくなっている。

さらにサスペンションのスプリングレートも高められ、上乗せされる垂直方向の負荷を受け止める。調整式コイルオーバーのスティールスプリングは、先代比2倍のレートだ。ホイールはフロントが20インチ、リアが21インチで、これも歴代GT3の最大サイズとなる。

ドライサンプの4.0L水平対向6気筒は自然吸気で、これは先代GT3からほぼキャリーオーバー。しかし最高出力は510ps/8400rpm、最大トルクは47.9kg−m/6100rpmと、先代より10ps/1.1kg-mアップし、991型GT3 RSに近づいた。また、ステンレススティールの新型エグゾーストは、新たにガソリンパティキュレートフィルターを装備しながら、先代より10kg軽量化している。

トランスミッションは、トルクベクタリング機構と電子制御リアディファレンシャルを組み合わせる7速DCTか、一般的な機械式LSDをセットする6速MTのいずれかを選択できる。

キャビンレイアウトは、2+2が標準仕様。エクステリアに手が入り、巨大なウイングを装着しないツーリングパッケージと、6点ハーネスを装着できるロールケージや消火器を備え、キルスイッチも装着可能な2シーターのクラブスポーツパッケージが設定される。テスト車は、クラブスポーツパッケージのDCT仕様だ。

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