【詳細データテスト】ポルシェ911 GT3 RS並みの走り 使い勝手は一歩後退 静粛性は皆無
公開 : 2021.08.21 20:25 更新 : 2021.09.05 20:03
操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆
このGT3は、歴代モデルと比べてもフィールがより自然で、ハードコアさも増している。コーナリングの平坦さやダイレクトさも、これまでの速い911で感じたことのないものだが、過敏で緊張感も強い。
公道上では、この20年ほどのいかなるGT3よりも、レースフィールドから飛び出してきたサーキット専用車のように感じられる。それもよかれ悪しかれだ。
ここでは、新設計のフロントアクスルが存在感を主張する。ハンドリングのレスポンスとステアリングの精密さはじつに驚くべきもので、しかもいまどきのクルマには滅多にないほどフィールが鮮明だ。フロントのグリップは、もはやミドシップのスーパーカーに対しても僅差に迫っている。
普通の速度域では、それがすぐにわかる。サーキットレベルのペースなら、アペックスをギリギリまでタイトに攻めるのも簡単で、本当に速度が高いときのみ発生するアンダーステアも安定している。
911に乗り慣れていても面食らい、しばらくは違和感があるだろうが、それにもじきに馴染む。舗装がよければ、シャシーの位置決めは容易で、直感的にライン取りできる。前例がないほどの鋭さも気にならない。
しかしながら、不整路面の凹凸や反りに対するステアリングの反応に慣れるには、もっと時間がかかる。ステアリングラックのフィルター性能はほとんどなく、ステアリングホイールは常に手のひらの中で騒がしく忙しない。不快に感じる時間は短く、とくに地形の影響を受ける場合くらいだ。
とはいえ、一日中運転していると手が痛くなるのもまた事実。理由はシンプルだ。これほどしっかりとリムを握り締めなくてはいけない機会は、そう多くない。
シャシーバランスはエクセレントだが、ボディコントロールはじつに驚くべきものだった。ロールはきわめて小さく、ピッチもスクオットも同様。タイヤが温まれば、そして路面が平坦ならば、あまり多くを要求しなくていいシャシーだ。
後輪を軸に遮るものなく旋回するプラットフォームは安定していて、非常に信頼度が高い。前輪は常に必死で路面を捉える。その両者が相まった完全無欠感は、揺るぎない安心を与えてくれる。
とはいえ、このクルマの路面コンディションへの依存度が、ここ最近のGT3より高いことは否定できない。より過酷なA級道路やB級道路では、リアサスペンションのトラベルが足りず、より鋭い入力に対してはいらだたしいほど硬く、ソワソワした動きが出る。
レートの高いスプリングを備えるクルマにはありがちだが、乗り心地を向上させるべく補助スプリングも与えられている。それでも、まだまだ改善の余地がみられる。
サスペンションがうまく処理できる多少は穏やかな路面なら、生き生きした走りを味わえる。ボディコントロールはタイトですばやく収束し、完璧にコントロールされたものとなる。