ダイハツ・コペン・プロトタイプ
公開 : 2014.04.05 22:50 更新 : 2017.05.29 18:45
■どんなクルマ?
2013年の東京モーターショーにて発表された、ダイハツの新型軽自動車オープンスポーツ。初代モデルは2002年から2012年まで、10年の長きに渡って生産された。今回の新型モデルは2代目となるが、ボディやパワートレーンなどすべてを一新。電動開閉式ハードトップを備えるFFスポーツというコンセプトは共通ながら、まったく新しいスポーツモデルとして登場する。
新型コペンの特徴のひとつが、ボディ構造をフレームとそれに装着する外皮のボディパーツに切り分けたこと。ダイハツでは「ドレスフォーメーション」と呼ぶこの構造を採用したことにより、ボディパーツを着せ替えるように変更することが可能になった。ボディパーツは左右のドアのみスチール製で、前後のバンパー、フェンダー、フロントフード、ロッカーパネルなど11部品はすべて樹脂製を採用。このためアフターマーケットパーツを装着して外観フォルムの変化を楽しむことが可能となる。
外装パーツの交換によるスタイリングの変更は、新型コペンの販売戦略上でも大きなファクターとなっている模様で、6月に予定されている正式発表時には車両販売だけでなく、スタイリングキットなど外装部品のラインナップにも期待がかかる。この外装部品に関してはアフターマーケット市場の活性化を期待すべく、開発に必要な数値などの情報も公開を検討しているとのことなので、自動車メーカーとアフターパーツメーカーが一体となって「コペン・ムーブメント」を作り出そうという雰囲気も感じられる。
■どんな感じ?
今回、試乗が許されたのは市販前のプロトタイプ。そのため外観はダミー擬装のチェッカー柄となっていたが、目を細めて擬装の下のボディを見てみると、東京モーターショーに出展されていた「KOPEN future included Rmz」とほぼ同じ。ショーモデルではKOPEN、市販モデルではCOPENと車名が変化するのも先代同様で、プロトタイプとはいえ車名からも市販モデルに近いことが伺える。
お台場にある大きな駐車場に特設コースを設置して行われた試乗会は、わずか10分間のみ。そのあいだで5速M/T車とCVT車を乗り分けるというものだった。特設コースは駐車場にパイロンを立てたもので、均一の滑らかな路面で、かつアップダウンもなかったために本当のファースト・インプレッションであることを最初にお断りしておこう。
まず最初にステアリングを握ったのはCVT車である。新型コペンのトランスミッションは5速M/Tと7速スーパーアクティブシフト付きCVTの2種類で、エンジン・ミッションともどもタントに搭載されているものを基本的に流用している。直列3気筒ターボ・ユニットは軽自動車のリミット上限である最高出力64ps/6400rpm、最大トルクは9.4kg-m/3200rpmを発揮する。
まず走り出して最初に感じるのは、フレームボディの剛性の高さだ。前述の着せ替えコンセプトのため、ボディ剛性のほとんどをフレームの剛性で担う形となるが、先代モデルに比べて上下曲げ剛性で3倍、ねじり剛性で1.5倍という数値を実現している。ドアのショルダー部分が高くなったこともあり、運転席に座ってみると視覚的にも包まれ感が増しており、いわゆる軽自動車らしさは薄れている。ブレーキやステアリング操作など、急のつく動作を意図的に試みてもすべてクルマが吸収してくれるような安心感は、ドライブトレインに対して余裕のあるシャシー、という組み合わせだからこそなせるアジだろう。
その印象はストロークの大きなサスペンションによるところも大きい。高剛性ボディ+よく動く脚まわり+グリップの高い専用設計タイヤという組み合わせにより、ロールは大きいながらもドライバーが車両の状態を俯瞰で見ているような、不安のない車両姿勢を実現している。
いっぽうの5速M/T車は、エンジンスペックはCVT車と同一ながらも、よりリニアな出力特性が大きな魅力だ。右足の動きにダイレクトに反応してトルクが伝わり、前輪がグイグイと車体を前に進めていく。約20秒で開閉が可能な電動トップを閉めて走ると、さらにスポーツ度は上昇。決して遅くはなく、ほぼ2速固定で走れてしまう今回の試乗コースではむしろパワフルだと思えるくらいだが、いつでもコントロールできていると思わせてくれる安心感がある。
■「買い」か?
同じ2013年の東京モーターショーで発表されたホンダのS660コンセプトとともに、新世代の軽スポーツとして話題を集めている新型コペン。開発陣からは、『同じ軽スポーツといえど方向性が違うのでライバルとは考えていない』という言葉も聞かれた。たしかに、先代コペンから受け継がれたカジュアルスポーティともいうべき扱いやすさや、女性ユーザーにも受け入れられやすそうな内外装のデザインはコペン独自のもの。
インテリアに関してはまだ市販プロトの域にも達していない、という注釈はあったが、ステアリングやドア内装、シートといった手に触れる部分における質感の高さは普通車並みだし、試乗車にはアイドリングストップ機構やシートヒーター、そしてオートエアコンなどの快適装備も充実していた。決してストイックなだけでない、ダイハツの考えるスポーツカーの方向性を新型コペンはしっかり示しているといえる。
市販モデルは2014年6月に正式発表となるが、価格は『税込みで200万円を切る』と言われている。もちろんその車両価格は最廉価グレードのものであり、そのシンプルなモデルに快適装備がどこまで装備されるかは不明だが、ドライブトレインや電動開閉式トップという主要装備は全グレードに共通となる。
軽自動車としては高価格帯となるけれど、装備の充実さ、爽快な走りっぷりは他では体験できない独自のもの。軽自動車であることがむしろ武器になっている、そんなハンドリングや運動性能を全天候で楽しみたいなら、新型コペンはかなりオススメの1台となりそうだ。
(text:佐橋健太郎 photo:田中秀宣)