【2023年末で生産終了】ラーダ・ニーヴァへ試乗 約50年生きたソ連の英雄 前編
公開 : 2021.08.29 08:25 更新 : 2021.08.30 07:37
50年近く生産が続けられるロシアのオフローダー、ラーダ・ニーヴァ。生産終了という情報を聞きつけた英国編集部は、試乗機会を設けました。
1977年の登場以来ほぼ形態は変わらず
今回の試乗は、いつもと違う。ステアリングを握ったのはラーダ・ニーヴァ。ご存知ない読者もいると思う。現代の自動車市場にあって、誰しもへオススメできるモデルではないことは、予めお断りしておこう。
驚くことに、ラーダ・ニーヴァは1977年の登場以来、ほとんど形態を変えずに生産が続けられている。これほど装飾的な要素を持たない実用車は、今後も作られることはないだろう。
多くの量産車は販売数を稼ぐため、数年おきに技術をアップデートし、エネルギー効率を高め、見た目が一新されている。それを当たり前のことだと、多くの人が考えているだろう。筆者もそうだ。
しかしニーヴァは違う。手頃な価格と耐久性、優れた走破性能で長年の支持を維持してきた。それでも過ぎる月日には勝てなかったようだ。プロトタイプの完成から50年近くが経過し、生産終了のXデーが近づいている。
最近われわれは、BMW i8やマクラーレン570S、初代トヨタGT86といった優れたモデルとの惜別を迎えた。ロシア生まれのニーヴァは英国では1996年以降、正規輸入されていない。でも筆者は、同じ気持ちでいる。
農業機械のような四輪駆動車を生産するために存在してきた、ラーダというブランド。少なくとも耐久性に関しては、ニーヴァは現代の魅力的なオフローダーと肩を並べる水準にあるといえる。
シベリアの大地が前提の高い実用性
ラーダ・ニーヴァがわれわれの目の前に姿を表したのは、1978年のパリ自動車ショー。スウェーデンのアバが、ポップミュージックのチャートを賑わしていた頃だ。ラーダの拠点は、まだソビエト連邦と呼ばれる国にあった。
当時の欧州でも、ニーヴァのターゲット市場は広いものではなかった。純粋に機能優先のオフローダーで、ドライバーの運転する楽しさや燃費、直線スピードは、殆ど追い求められていなかった。
ニーヴァが前提としたのは、永久凍土がすぐ近くに迫るような、麦畑が広がるシベリアの大地。ブラジルの平原の、ゴツゴツとした岩場も得意としていたはず。大都市の高速道路網や目抜き通りの移動に耐えられないとしても、当然ではあった。
似たような辛口の評価は、初代ランドローバー・ディフェンダーやジープ・ラングラー、メルセデス・ベンツGクラスへも過去には当てはまっただろう。しかし今では、オンロードとの相性が良い、プレミアム志向の都会派モデルへと進化している。
もちろんそれらも、長い歴史に裏付けされた、秀でたオフロード性能を変わらず備えている。しかしクルマの訴求力としては、3分の1程度を占めるに過ぎないと思う。
ニーヴァは40年以上、最優先事項として実用性を1番に掲げてきた。クロムメッキもアルカンターラもない。手頃な価格を維持し続けている理由でもある。