【説明できる?】高速道路「ロードプライシング」何のため? いいことだけではない事情
公開 : 2021.08.24 05:45 更新 : 2021.10.09 23:38
東京2020パラリンピック開催にあわせ、首都高で実施されるロードプライシング。制度とメリット/デメリットを解説します。
交通量調整 ロードプライシングって?
東京2020パラリンピックの開催にあわせて、首都高速道路のロードプライシングが8月24日から9月5日にかけておこなわれる。
ロードプライシングとは何かを、あらためて説明したい。
ロードプライシングとは、クルマの往来の数をコントロールする方法の1つ。
専門用語で言えば「交通需要マネジメント」だ。
基本となるのは「通行料金が高いと、使う人が減る」という現象。同じ目的に行くのに、何種類かのルートを選べるのであれば、通行料金の安い方を選ぶ人が多い。そして、通行料金の高いルートを選ぶ人は少ない。
つまり、安いルートは混み、高いルートは空く。
その原則を利用することで、狙ったルートの交通量を調整しようというのがロードプライシングとなる。
そのルートの交通量を減らしたいのなら通行料金を高め、逆に増やしたいなら安くするのだ。
ちなみに、かつて通行料金を安くすることによって、交通量を激増させたルートがある。東京湾アクアラインだ。
東京湾アクアラインは、神奈川県川崎市から東京湾を横断して千葉県木更津市へ至る有料道路。
全長15.1kmの東京湾アクアラインの1997年の開通時の通行料金は普通車が4000円もした。そのころの1日の平均通行台数は1万台ほどであった。
しかし、その後、3000円、2320円と料金を下げるごと通行台数を増やしてゆく。
そして2009年に800円に落とすと、なんと交通量は前年の1.5倍ほどに増加。今では1日4.4万台もの台数になっている。通行料金を安くすれば、台数は確実に増えるのだ。
首都高で実施 日中は減/夜間は増を狙う
今回の首都高速のロードプライシングでいえば、日中(6時~22時)の首都高速の主に東京都内エリアの料金を、プラス1000円と高くする。
一方、夜間(0時~4時)は半額に。狙いは、日中の交通量減少だ。
夜間に半額にするのは、値上げだけでは申し訳ないということだろう。日中の交通量を減らして、かわりに夜間に増やしたいというのが、今回のロードプライシングの狙いとなる。
ロードプライシングは、どれだけ効果があるのか。
それは7月19日から8月9日にかけて行われた東京2020オリンピック向けのロードプライシングの結果を見れば明らかだ。
警視庁がまとめたところによると、期間中の渋滞は68-96%も減ったのだ。
平日では7割以上減った日が大半で、土日のほとんどが9割も減っている。まさに激減といえるほどの大きな効果が出たのだ。
ちなみに、首都高速では、今回のオリンピック/パラリンピックのような期間限定ではなく、もっと長期にわたるロードプライシングも実施している。
それが首都高速横羽線向けの「環境ロードプライシング割引」だ。
これは、東京都大田区の高速大師橋北詰から、神奈川県横浜市中区石川町ジャンクションへ至る横羽線を走る大型車/特大車向けのもので、「横羽線ではなく、他の湾岸線や川崎線を使うと、通行料金を最大20%割引します」というもの。
横羽線を通る、大型車/特大車を少なくすることで、人家の多い横羽線沿線の環境を改善しようというのが狙いとなる。