【トヨタ・ヤリス】これほどまでに売れたワケ ヤリスに吹いた3つの「追い風」
公開 : 2021.08.27 05:45 更新 : 2021.10.09 23:42
いかほど? ヤリス・クロスの貢献度
「ヤリス」のヒットに大きな貢献を果たした「ヤリス・クロス」
では、その貢献度はいかほどなのか。
ライバルとなる「ヴェゼル」、「キックス」、「CX-3」の販売台数を元に予測してみたい。
2020年1~12月の「ヴェゼル」の販売は23位(約3万3000台)、「キックス」は36位(約1万8000台)、「CX-3」は50位(約7600台)。
「ヤリス・クロス」は、そうした3モデルと同様か、それ以上が販売されているはず。
また、ライバル3モデルを合計すると、その販売台数は約5万8000台。これは15位となっている「RAV4」の約5万5000台を上回る。
ちなみに、2020年1~12月の販売1位は「ヤリス」だが、2位は「ライズ」となる。
その2モデルの販売数の差は、約3万5000台であった。もしも、「ヤリス」に「ヤリス・クロス」という兄弟車がなければ、順位がひっくり返った可能性もあった。
そうした意味で、「ヤリス・クロス」の存在は重要だったといえるだろう。
一方、もう1つの兄弟車「GRヤリス」は、どうかといえば、残念ながら数字での貢献は小さいはず。
なんといっても「GRヤリス」の値段は265万円から。
普通の「ヤリス」や「ヤリス・クロス」よりも100万円以上も高いからだ。
しかし、「GRヤリス」は、モータースポーツ直系のイメージを「ヤリス」に付与するという大きな仕事を果たしている。
「ヤリス」のイメージアップには多大な貢献を果たしており、それが数字には出ないけれど、販売台数アップにも効いていることだろう。
ライバルの価格アップも追い風に
他にある「ヤリス」ヒットの理由に、ライバルの価格アップもあるだろう。
ちょうど、2020年2月に「ヤリス」と同時に新型に切り替わったのが、ホンダの「フィット」だ。
今回の「フィット」は、1.3Lのガソリン・エンジン車と、1.5Lのハイブリッドという2つのパワートレインが用意されている。
価格は1.3Lが約160~220万円。ハイブリッドが約200~250万円という価格帯だ。
実のところ、これは価格アップとなる。
先代は2種類のエンジン車と1種のハイブリッドという構成で、価格帯は130万円~200万円。新型になって、1番安いエンジン車が省かれ、しかも高い方の値段も上がっている。
一方、「ヤリス」は、1Lと1.5Lのガソリン・エンジン車、そして1.5Lのハイブリッドだ。価格は140~250万円。
つまり、先代「フィット」と同じように、エントリーの安い価格帯が用意されている。
ちなみに、近年まで年間販売ナンバー1を争っていた日産の「ノート」は、2020年12月にフルモデルチェンジ。
つまり、2020年はモデル末期で競争力が落ちていた。
また、新世代の「ノート」は、ばっさりと安価なエンジン車を廃止。すべて200万円以上のハイブリッド専用車となっていた。
つまり、「ヤリス」のライバルとなる「フィット」と「ノート」は、ともに安いグレードをカットし、価格帯をアップさせていた。
数を競う販売ランキングでは、これは大きなディスアドバンテージとなることだろう。
価格コンシャスな商用ユースやレンタカー需要という面では、「ヤリス」が圧倒的に優位となる。
これも、また「ヤリス」大ヒットの要因となっているのは間違いないだろう。