【1年違いのラリーチャンプ】タルボ・サンビーム・ロータスとアウディ・クワトロ 前編
公開 : 2021.09.18 07:05 更新 : 2022.11.01 08:53
オリジナル状態の2トーン・ボディ
今回ご紹介するサンビーム・ロータスは、1979年生産された初期の50台の1台。1987年からケビン・マルコムが大切に所有している。それ以前は友人がヒルクライムを楽しんでいたが、購入時はコースアウトし破損した状態だったという。
クライスラーの星型ロゴ、ペンスターがフロントグリルに収まっている。だが1979年夏にタルボはグループPSAへ買収され、タルボ・サンビーム・ロータスとして記憶されることになる。
しばらく通勤で乗った後、1996年にオリジナル状態へ戻すべくエンバシー・ブラックで塗装。シルバーのストライプで仕上げた。以降は場面を限定して乗っているという。おかげで走行距離は12万km程度と、比較的短い。
インテリアも新鮮な状態。サンビーム・ロータス・オーナーズクラブが準備した、新しいファブリックで仕立て直してある。車内は実務的なグレーとクロのモノトーンだ。
サイドウインドウのワインダーとヒーターのスライダー、ラジオなどが簡素に付く。スポンジのように柔らかい、ベロア張りのシートに座ると着座位置が高い。ステアリングホイールは大きく、膝を開かないと当たってしまう。
視界は全方向で良好。ダッシュボードはシンプルで、フロントガラスは緩やかにカーブを描く。
傾斜して搭載された2.2Lツインカムの4気筒エンジンは、アイドリング時は少し不機嫌そう。1速が飛び出したドッグレッグ・パターンのレバーを動かし、クラッチをつなぐ。シフトレバーのストロークは長く、ギア比はショートだ。
高回転がお好みのタイプ911エンジン
ギアは常に1段上を選んでしまう。960kgしかないから、軽快に滑らかに走る。最高出力は152psだが、第一印象でエネルギッシュなクルマだと理解できる。
スピードが増すと、サスペンションの動きもスムーズになる。アシストの付かないステアリングは、低速では重い。直進状態からの切り始めは曖昧ながら、ボディは軽く扱いやすい。ステアリングでのライン修正は難しくない。
サンビーム・ロータスと少し打ち解けたところで、ペースを速める。アクセルペダルの角度へ即座に反応する。
デロルト・キャブレターが2基載り、心地良い吸気ノイズが聞こえてくる。タコメーターの針の回転に合わせて、パワーも上昇。タイプ911エンジンは高回転がお好み。最高出力が発揮される5750rpm付近でも、息苦しさはない。
英国人にとっては、エスコートRSに載るBDAユニットと同じくらい特別なエンジンだ。開発者のキンバリーは試験データを今も保管しているが、サンビーム・ロータスは0-97km/h加速を6.6秒でこなしたという。エスコートより2秒近く速い。
交差点からの加速では、2速でも小ぶりの13インチ・タイヤは滑りたがる。低速や中速コーナーでの喜びはひとしお。フロントタイヤのグリップを追求しつつ、短いホイールベースを活かし、アクセルペダルを戻すとリアタイヤが外へ流れる。
ワークスドライバーを努めたフレクランですら、サンビーム・ロータスには驚かされたという。「かなり運転しやすく感じました。機敏で、エンジンも素晴らしい。シャシーが追い付いていませんでしたね」