【英国の影の工場】オースチン ヴォグゾール ロールスロイス/ベントレーほか 後編

公開 : 2021.09.19 17:45  更新 : 2021.10.15 13:24

7. クルー:ロールスロイス/ベントレー

1930年代まで、ロールス・ロイスは多くのクルマやエンジンを手掛ける企業だった。1939年から1940年にかけて、新しいマーリンV型12気筒エンジンのプラントも、クルーに設けれれている。

この名ユニットは、スピットファイア戦闘やランカスターとモスキート爆撃機など、第二次大戦の名機へ搭載されている。1945年の集結とともに工場は役目を終え、ロールス・ロイスとベントレーの自動車部門の本部が構えられた。

クルー:ロールスロイス/ベントレーのシャドー・ファクトリーの様子
クルー:ロールスロイス/ベントレーのシャドー・ファクトリーの様子

1998年に2つのブランドは売却されることになり、ロールス・ロイスの自動車部門はBMWが買収。クルーを離れた。一方のベントレーはフォルクスワーゲン傘下となり、クルー工場でブランドの伝統を今も守っている。

マニアな小ネタ:クルーは本来、鉄道の町として有名だった。現在はベントレーの城下町として栄えている。

8. バナーレーン:スタンダード

複雑なブリストル・ハーキュリーズ星型14気筒エンジンを製造するために建設された、コベントリー郊外のバナーレーン・シャドー工場。1945年までスタンダード社の管理下にあり、コベントリーでは最大の就職口になっていた。

戦争が集結してもスタンダード社は工場を借用。1958年まで本社として利用したほか、ファーガソン・トラクターを量産した。

バナーレーン:スタンダードのシャドー・ファクトリーの様子
バナーレーン:スタンダードのシャドー・ファクトリーの様子

この場所では、サルーンのスタンダード・ヴァンガードのほか、スポーツカートライアンフTR2、ヘラルド、TR3のル・マン・マシンなどが開発されている。デザイナーのミケロッティの協力を仰ぎながら。

その後、ファーガソン・ブランドは売却されトラクターの製造はカナダ人オーナーへ任される。スタンダード社はブリティッシュ・レイランドへ併合された。

マニアな小ネタ:現在、バナーレーン工場は跡形もない。数1000件の家が立ち並ぶ、閑静な住宅地になった。

9. ソリハル:ローバー

1941年に、ローバーのコベントリー工場は爆撃を受けるが、新設されたソリハルと、隣接するアコックスグリーンのシャドー工場で積極的に生産が続けられた。

戦時中にこの場所で生み出されていた主力製品が、マリーンV12気筒エンジンを搭載したメテオ戦車だ。ほかにも、多くの軍需品が製造されている。

ソリハル:ローバーのシャドー・ファクトリーの様子
ソリハル:ローバーのシャドー・ファクトリーの様子

平和が訪れた1945年、工場は使われなくなるが、1948年にローバー社が進出。ローバー・ブランドの乗用車とともに、ランドローバーが製造された。

1970年からはレンジローバーも加わり、トライアンフTR7やTR8といったスポーツカーも1980年から生産されている。ガスタービン・エンジンを搭載したテスト車両や、大型サルーンのローバーSD1なども作られていた。

マニアな小ネタ:量産版のランドローバーの各シリーズと、後の初代ディフェンダーは、このソリハル工場で製造されていた。現行型は、スロバキアの新設工場だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グラハム・ロブソン

    Graham Robson

    英国編集部
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事