メルセデス・ベンツSLS AMG GTファイナル・エディション

公開 : 2014.04.11 22:50  更新 : 2017.05.23 16:45

■どんなクルマ?

現代に蘇ったガル・ウィング・メルセデスも遂に終焉の時を迎えた。AMGのトビアス・メールス会長は、ちょっと気まずくなるほど長いネーミングを持ったSLS AMG GTファイナル・エディションに関してこう語った。

「AMG独自に、一から開発が行われたSLSは、正にAMGにとって新しい時代をもたらしたモデルであった。そして、今、そのわれわれのスポーツカーの最終型をお届けすることになる。」と。

シュツットガルト郊外にあるAMGの工場が、より小型で安価な新しいモデル、新しいAMG GTを製造するために生産ラインが修正されるため、このSLS AMG GTファイナル・エディションはクーペとロードスターが合計で350台、5月までの生産となる。

SLS AMG GTファイナル・エディションは、2009年に登場したSLSのラインナップにあって、最も成熟したモデルとなる。それは、サーキット走行を主目的に造られたSLS AMGブラック・シリーズで採用されたエアロダイナミクスと軽量ボディをまとい、SLS AMG GTでアップグレードされたエンジンとサスペンションを組み合わせたモデルだ。メールスによれば、一般公道とサーキットにおけるベストなバランスをもったパフォーマンスを発揮するモデルだという。

ボンネットの下に納められるお馴染みの6.2ℓV8は、吸気特性、ブースト、そして燃焼プロセスが見直されている。今後、AMGのラインナップとしては新しい4.0ℓツインターボ・ユニットに変更されることになるが、その前の6.2ℓV8としては最終形となるこのエンジンは、スタンダードなSLS AMGよりも18ps大きい592psのパワーとなっている。一方、トルクは66.2kg-mと変化はない。

トランスミッションはトランスアクスルに搭載された7速デュアル・クラッチで、コンフォート、スポーツ、スポーツ・プラス、マニュアルという4つのモードを持つ。そのソフトウェアはSLS AMG GTでアップデートされたものと同じものを採用する。よりパリっとしたシフト・アクションをもたらすものだ。

エクステリアでは、フロントにはカーボンファイバー・スピリッターが、リアには巨大な固定式ウイングが与えられている。これはSLS AMGブラック・シリーズに採用されたもので、エア・アウトレットを持つカーボンファイバー製のボンネットも同様に移植されている。このボンネットは、エンジン・ベイからの熱の放出に関して効果が高く、しかもリフトも減らす効果もあるとされているものだ。

ホイールは、フロントが19インチ、リアが20インチの鍛造アルミニウムで、これに専用開発されたダンロップ・スポーツ・マックス・レーシング・タイヤが組み合わせられる。

ボディ重量は1620kgと通常のクーペ・モデルと変りなく、そのパワー・ウエイト・レシオは364ps/トンとなる。

インテリアは、キルトの本革による内装、カーボンファイバー・トリム、そしてアルカンタラも使用される。これは通常モデルではオプションとされていたディジーノ・ラインからもたらされたものだ。

価格はクーペで£189,880(3,220万円)だ。これは、SLS AMG GTのカーボンファイバー・エクステリアと専用デザインのホイールがない状態での価格、£180,485(3,080万円)を考えると、バーゲン・セール的な値付けなのかもしれない。

■どんな感じ?

街中での取り扱いが楽なモデルだ。都会では、特にロー・エンドでのエンジンのフレキシビリティと、ギアボックスの自然さが有用な武器となる。また、アイドリング・ストップも有用な装備だ。可変ダンパーのセッティングも、4つあるうちのソフトな方、2つであれば快適な乗り心地を提供してくれる。確かに、相対的には固い乗り心地ではあるものの、低速でも過酷なハーシュネスをもたらすようなことはない。そして、ひと度、オープン・ロードにクルマを向ければ、優れた足まわりとなるのだ。

そのエンジン・パワーは、2シーター・ボディに感動的なペースをもたらす。それは、スタンディング・スタートであっても、追い越し加速であっても同様だ。街中では充分なフレキシビリティを発揮するパワー・ユニットは、5000rpmを越えたあたりから本当に生き生きしたものに変化する。インレット・マニフォールドに変更を受けたエンジンは、標準的なSLS AMGよりも活発になり、ナチュナルにパワーが出てくる印象だ。オフィシャルの0-100km/h加速は3.7秒だが、SLS AMG GTファイナル・エディションはそれよりも速く感じられる。優れたエアロダイナミクスによる強力なダウンフォースと共に、320km/hのトップ・スピードに到達することは容易だ。高速域では素晴らしい直進安定性を見せるとともに、フロント・エンドのリフトも少ないので、無制限のアウトバーンでも安心して走行することができる。

また、そのサウンドも魅力のひとつだ。低回転域ではバリトンを奏でるパワー・ユニットは、ミッドレンジから7200rpmのレブ・リミットではNASCARのような咆号に変わる。それだけでも、このSLS AMG GTファイナル・エディションをチョイスする理由になるほどだ。

油圧アシスト付きのステアリングは魅力的なほどダイレクトで、フィードバックも良く、その特性にも優れる。

この現代的なガル・ウィング・モデルの全体的なバランスは、少なくともアスファルトの上では、ファイナル・エディションの名に相応しい素晴らしいものだった。コーナーでもフロント・エンドは鋭く熱心に食い付き、リア・ホイールも決してドリフト・アウトするような感じを微塵も見せない。その専用開発のタイヤとの組み合わせは、ドライバーのテクニックをフルに引き出すものと言えよう。

■「買い」か?

5年間にわたる生産期間で、SLS AMGは10,000台以上がセールスされたヒット作となった。SLS AMG GTファイナル・エディションは、AMGが初めてのオリジナル・スポーツカーであり、そこには数多くのノウハウが惜しみなく注ぎ込まれたモデルでもある。しかも、このSLS AMG GTファイナル・エディションは、初期のモデルよりもパフォーマンスが大きく向上しているばかりか、日常的なユーザビリティをもバランスよくとられた1台であるのだ。

(グレッグ・ケーブル)

メルセデス・ベンツSLS AMG GTファイナル・エディション

価格 £189,880(3,236万円)
最高速度 320km/h
0-100km/h加速 3.7秒
燃費 7.6km/ℓ
CO2排出量 308g/km
乾燥重量 1620kg
エンジン V型8気筒6208cc
最高出力 591ps/6800rpm
最大トルク 66.2kg-m/4750rpm
ギアボックス 6速デュアル・クラッチ

▶ 海外初試乗 / メルセデス・ベンツSLS AMG GT
▶ 海外初試乗 / メルセデス・ベンツSLSエレクトリック・ドライブ
▶ 海外初試乗 / メルセデス・ベンツSLS AMG ブラック・シリーズ
▶ 海外初試乗 / メルセデス・ベンツSLS AMG GT

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

人気記事