【1000万で選ぶなら】マクラーレン12C BMW M3 CSL 同価格帯の2台を比較 前編

公開 : 2021.09.18 09:45  更新 : 2021.10.15 13:22

サービス費用は専門ガレージで抑えたい

主な作業の1つが、12Cでは簡単にずれてしまうサスペンションのジオメトリ調整。アッパーアームやロアーアーム、Zバーリンクなど、比較的単純な消耗部品の交換も多い。

しかし、インプットシャフトの不具合に関連するトランスミッションの故障という、聞くだけで恐ろしい内容もある。こんな手間の掛かりそうな修理こそ、ソーニー・モータースポーツ社の得意分野だ。

シルバーのBMW M3 CSLとオレンジのマクラーレン12C(MP4-12C)
シルバーのBMW M3 CSLとオレンジのマクラーレン12C(MP4-12C

正規ディーラーへトランスミッション修理を依頼し、丸ごと交換だと判断されると、2万7000ポンド(405万円)も請求される可能性がある。ところが、ここならドライブシャフト・シールやベアリングなどを独自開発しており、ずっと安く直してくれる。

「世界中、どんなトランスミッションでも、7500ポンド(112万円)で修理が可能です」。とソーンが説明する。マクラーレンを諦めるオーナーの数も、少なくしてくれる。

ソーニー・モータースポーツ社は、1時間あたり税別で95ポンド(1万4000円)の定額サービス費用を設定している。平均的なメンテナンス費は、年間で1500ポンド(22万5000円)前後になるという。

予期しないトラブルに備えて、年間2850ポンド(43万円)で保証も付けてくれる。オーナーが、安心して毎晩眠れるように。スーパーカーの維持費として考えれば、法外なものではないだろう。

少し宣伝的になってしまったが、ソーンのマクラーレン12Cを運転させてもらった。素晴らしい血統を、つぶさに体験することができた。

12Cは純血統のスーパーカー

上方に持ち上がるディヘドラル・ドアを開き、カーボンファイバー・タブの分厚いサイドシルをまたぎ、低い位置のシートへ腰を下ろす。フロントガラスはワイドで、前方視界を遮るものはない。

スタートボタンを押し、ツインターボで過給される3.8L V8エンジンを目覚めさせる。エキゾチックさは、少し物足りない。でも、マクラーレンの象徴といえるサウンドだ。

シルバーのBMW M3 CSLとオレンジのマクラーレン12C(MP4-12C)
シルバーのBMW M3 CSLとオレンジのマクラーレン12C(MP4-12C)

ステアリングの反応は、尋常でないほどに繊細。潜在的に能力の高いクルマを、驚くほど身近な存在にしてくれている。レシオは、フェラーリ458よりスローで自然。感触も良い。マクラーレンの720Sよりも。

乗り心地も際立つ。路面の乱れを完璧に吸収し、意欲的なコーナリングを一切妨げることはない。

だが、ボディは低くワイド。フロントノーズが常に意識下にある。フロントタイヤに掛かる質量が、不足気味に思える。

マクラーレンは10年間で目覚ましい進歩を遂げたが、12Cは今でも恐ろしく速い。初期の12Cは、最高出力600ps、最大トルク61.1kg-mを発揮した。その後アップグレード・プログラムが提供され、625psへ引き上げられている。

記憶では、パワーデリバリーも滑らかになっていたように思う。3500rpm位まではターボラグが残っているが、それ以降はリアタイヤを空転させる勢いでパワーが放たれる。7000rpmまで怒涛の勢いだ。純血統のスーパーカーであることは間違いない。

BMWの隣に並べると、一層特別感が引き立つ。マクラーレンへ光が当たるように。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ベン・バリー

    Ben Barry

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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