【21世紀の英国スポーツ】ジェンセンS-V8とモーガン・エアロ8 V8のロードスター 前編

公開 : 2021.09.25 07:05  更新 : 2021.10.11 16:26

21世紀の幕開けを待っていたかのように登場した、2台の英国スポーツ。V8エンジンを搭載したロードスター、S-V8とエアロ8を、英国編集部がご紹介します。

機運を逃さなかったジェンセンとモーガン

執筆:Simon Charlesworth(サイモン・チャールズワース)
撮影:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
一般的に、モーガンはスポーツカーでジェンセンはグランドツアラー、というカテゴリーに属するとお考えではないだろうか。両ブランドを多少でもご存知の読者なら、どちらかといえば。

でも、今回の2台は少し違う。ワインレッドが眩しいオープンのモーガン・エアロ8は、グランドツアラー的。メタリックブルーのジェンセンS-V8は、スポーツカーに該当するように思う。

メタリックブルーのジェンセンS-V8とワインレッドのモーガン・エアロ8 シリーズ1
メタリックブルーのジェンセンS-V8とワインレッドのモーガン・エアロ8 シリーズ1

2台ともにV8エンジンを搭載し、21世紀初頭に似たようなパフォーマンスを誇示した。1990年代に立案され、新車当時の英国価格も4万5000ポンド前後で遠からずだった。

1990年代の10年間はミレニアムを目前に、特別な空気感に包まれていた。自動車メーカーの中には再生の時期として行動し、成功したブランドもある。結果が伴わなかった例も多かったけれど。

定評を獲得していたメーカーにとっては、繁栄の時期でもあった。英国最後の主力メーカー、ローバー・グループでさえ、復活を遂げつつあるように見えた。数十年ぶりに。

マツダMX-5(ロードスター)の成功が、拍車をかけたのだろう。英国の自動車メーカーは、絶滅危機に瀕するブリティッシュ・スポーツカーを復活させるため、協力することさえあった。

ジェンセンとモーガンも、その機運を逃さなかった。そして今回の2台が誕生する。

ジェンセンS-V8を眺めると、オースチンヒーレー100へヒントを求めたように思えてくる。扇形の特徴的なフロントグリルや、全体のプロポーションをご覧いただきたい。

ヒーレー100を想起させるスタイリング

フロントフェンダーの後ろにはワークスマシンのようなスリットが入り、ボディカラーはドアのエッジを越えて車内に回り込んでいる。ダッシュボードのドライバー側には4眼メーター。ヒーレー100のミニマリズムを感じずにはいられない。

21世紀のクルマとして、能力は高い。スピードメーターは170mph(273km/h)まで振られ、レブカウンターは7000rpmでレッドラインが切られている。

ジェンセンS-V8(2001〜2006年/英国仕様)
ジェンセンS-V8(2001〜2006年/英国仕様)

V8エンジンを載せたジェンセンが、ヒーレー100と似ていることには理由がある。何しろ本来は、ヒーレーとして生まれる予定だったのだ。しかし、プランAはうまく進まなかったらしい。

アメリカで1997年に量産されたホットロッド、クライスラー(プリムス)・プロウラー。その成功を見たハワード・ガイとゲイリー・ドイという2人は、独自のスポーツカーを販売したいと考えた。そこで設計されたのが、後のS-V8だ。

当初はプロジェクト・リオという名前でスタート。スチールのモノコックシェルに、アルミニウムのボディパネルを被せ、GM社製のV6エンジンを搭載するロードスターという計画だった。

だが顧客の反応では、V6エンジンの最高出力、210ps以上が望まれていることを知る。そこでフォードのトリトン・ユニットへスイッチ。4.6LのV8エンジンが選ばれ、バルカンへプロジェクト名も変更された。

バルカンのプロトタイプは1998年と1999年の英国モーターショーでお披露目され、沢山の興奮と、300件もの前払金を獲得。固定ルーフのジェンセンC-V8として、2000年に正式発表された。

記事に関わった人々

  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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