【EVを補完するものとして】BMW iX5ハイドロジェン 未来見据えた水素燃料電池車 ミュンヘンで公開
公開 : 2021.09.08 07:05 更新 : 2022.11.01 08:41
BMWの水素自動車「iX5ハイドロジェン」はトヨタと共同開発した技術を採用。航続距離は約500kmです。
燃料電池車の可能性を探る車両
BMWは、ミュンヘン・モーターショーにおいて、燃料電池車(FCEV)プロトタイプの「iX5ハイドロジェン」を公開した。今後、FCEV技術を広く展開することを目指すが、iX5ハイドロジェンは通常の販売は行わない。
BMWの水素部門を率いるユルゲン・グルドナーは、「将来、第2のエネルギーキャリアが必要になると確信している」と述べ、水素の可能性に言及した。グルドナーによれば、水素はバッテリー電気自動車(BEV)と競合するものではなく、大型車や長距離移動、充電が困難な人に適した補完的な技術であるという。
iX5ハイドロジェンは、トヨタと共同開発した燃料電池技術を用いて、乗用車としては最もパワフルな125kWの燃料電池スタックを搭載している。
水素は2つのタンクから供給される。1つは通常のトランスミッショントンネルの位置に、もう1つはリアシートの下に設置されている。このタンクには、700barの圧力で6kgの水素が充填される。また、374psの電気モーターと150kWのバッテリーブースターをリアアクスルに搭載している。
航続距離は500kmとされているが、これは水素の高速充填時間を考えれば十分だとBMWは考えている。iX5ハイドロジェンの重量は、X5のプラグイン・ハイブリッド車と同じ約2500kgとなっている。
ベースとなったX5との差別化のために、内外装のディテールが一部変更され、他のiモデルからインスピレーションを得たデザインテーマとトリムパッケージが採用されている。また、新しい22インチのアロイホイールを装着し、タイヤには持続可能素材のゴムを使用している。
EVとプラットフォーム共有?
一般販売はされないが、その後継モデルは販売される予定だ。グルドナーは、BMWがFCEVにも対応したEVプラットフォームの開発に取り組んでいることを明かした。バッテリーパックが収まる位置にスリムな水素タンクを配置するというものだ。
グルドナーは次のように述べている。
「これで、将来に向けて必要な柔軟性が得られます。10年以内には実現するでしょう。それがこの技術をさらに発展させる鍵です」
その頃には、燃料電池スタック自体がより小さく、より効率的になっているだろう。また、大型トラック業界ではゼロ・エミッション目標を達成するために水素の導入が加速しているが、燃料電池スタック間の共通性が高いことから、乗用車にもメリットがあるはずだ。
BMWは、燃料電池の動力源として環境に優しい水素を採用することを約束。FCEVの生産から廃車に至るまで生涯のCO2排出量がBEVと同等になると見込んでいる。