【トヨタの考えは?】脱炭素時代 1.5兆円が動く、電池の開発・安定供給への道筋

公開 : 2021.09.08 19:45  更新 : 2021.10.11 13:55

全固体電池車 すでにナンバーが

期待の全固体電池についての説明もあった。

それによると「2020年6月、全固体電池を搭載した車両を製作し、テストコースで走行試験を実施。車両走行データを取得できる段階に来た。そのデータをもとに改良を重ね、2020年8月、全固体電池を搭載した車両でナンバーを取得し、試験走行を行った」という。

同じ説明会で発表された全固体電池を搭載するナンバー付き車両。映像では、車体の側面に「Powered by All-Solid-State Battery」のデカールを確認できる。
同じ説明会で発表された全固体電池を搭載するナンバー付き車両。映像では、車体の側面に「Powered by All-Solid-State Battery」のデカールを確認できる。    トヨタ

説明会では短い動画が紹介されたが、その車両は東京2020オリパラでも、マラソンコース上によく似たものが登場したと記憶する。

前田CTOによれば、「全固体電池はイオンが電池の中を高速に動くため高出力化に期待できるなどのメリットがある反面、寿命が短いという課題も見つかり、これが実用化へ向けた一歩になった」と話す。

また、質疑応答で2020年代前半に市販車へ導入するスケジュールに変わりはないが、特性上、当初はHEVから採用していく方針を明らかにした。

BEVの普及のためには、電池供給体制の構築も重要だ。

前田CTOは、「電動車両が急拡大する中、グローバルの地域ごとの様々なお客様のニーズに応えながら、必要なタイミングで、必要な量を安定的に供給できるフレキシブルな体制構築を進めていく」とし、トヨタは自社グループ以外にも、協業で提携済みのパナソニックや中国CATL(寧徳時代新能源科技)などと連携して、膨大な電池供給を地域ごとにまかなっていく計画だ。

最後に前田CTOからは、2030年までに掲げるトヨタの電池戦略についても説明があった。

EVのbZシリーズ 22年発売へ

それによると「車両・電池一体開発によって、台当たりコスト50%以下の実現を目指す」とされている。

具体的には材料の開発を進めることで、電池単体で30%以上のコスト低減を目指し、さらに車両側の電費(電気消費量)の30%改善によって、電池容量を30%低減させる。

2022年の年央に発売すると発表されたEV、トヨタbZ4X(ビーズィーフォーエックス)。
2022年の年央に発売すると発表されたEV、トヨタbZ4X(ビーズィーフォーエックス)。    トヨタ

この合わせ技によって、結果としてコスト半減を目指すというわけだ。

そして、小さな原単位でフレキシブルな供給網・生産体制を構築する中で、電池需要増大へ柔軟な対応を目指す考えも示した。

この結果、これまで30年時点の目標を180GWhとしていた目標を、200GWh以上に高めることとなった。これに伴い、前田CTOは「電池の供給体制の整備と研究開発の投資額は、2030年までに約1.5兆円になると見込んでいる」と語った。

この巨額の投資で、トヨタは電動化へ本腰を入れていることを世界に向けてアピールしたと言えるだろう。

今回の説明会は、カーボンニュートラルへの貢献に対するトヨタの姿勢を明らかにしたものだ。

2022年中頃には新たなEV「bZ4X」が登場することも明らかになった今、トヨタのBEV戦略が本格化しそうな状況にある。

しかし、トヨタは今後もHEVを重視していく考えに変わりがないことも示した。

個人的には航続距離を伸ばすために大量のバッテリーを搭載すれば、エネルギー効率が落ちた状態で移動しなければならないわけで、その現状を踏まえるとHEVを重視する選択は決して間違いではないと思う。

この時期にあえてHEVに白羽の矢を立てるトヨタの戦略を、世界ははたしてどう見るのだろうか。

記事に関わった人々

  • 徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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