【詳細データテスト】アストン マーティン・ヴァンテージ 磨かれたシャシー 加速も向上 室内は要改良
公開 : 2021.09.11 20:25 更新 : 2021.09.14 05:54
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
アストン曰く、これは現行ヴァンテージにおいて、2018年のデビュー以来もっともサーキット志向の強いモデルだという。この系譜にウインドスクリーンを排したV12スピードスターがあることを考えると、必ずしもその主張が当てはまるとは限らないが。
このアストン最小モデルに、12気筒がうまく搭載された実績があるので、このF1エディションにもV12を積めば、かつてのヴァンテージGT12の跡を継ぐといえるモデルになっただろう。しかし、今回はそうはならなかった。
このクルマのメカニカルレイアウトは、すでにおなじみのものだ。メルセデスAMG製のV8ツインターボは、フロントアクスルより後方に積まれるフロントミドシップ。トランスミッションは8速ATで、リアに搭載するトランスアクスルとなっている。
このふたつをつなぐプロペラシャフトはカーボン素材で、トルクベクタリング機構を備える電子制御LSDを装備する。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンクだ。
新たなトップの指揮下でまず着手されたのは、7速MTの廃止だった。その目的はコストカットと、製造工程の複雑さの削減、そして品質の向上だった。そのため、F1エディションはATのみの設定となった。
エンジンの電子制御の変更で、発生回転は同じ6000rpmのまま最高出力を標準グレードの510psから534psへ引き上げた。トルクは同等の69.8kg-mだが、トルクバンドはやや広がったようだ。アストンはエンジン特性のグラフを提供してくれなかったので、そこは推測するしかないが。
3.5秒の0−97km/h加速タイムと314km/hのトップスピード、2.93:1のファイナルレシオは、すべて標準モデルと同数値。ただし、トランスミッションの制御は洗練され、トルクカットマネージメントの追加でシフトスピードが速くなっているという。
オールアルミのモノコックシャシーは、フロントエンドの剛性を高め、ステアリングのレスポンスとフィードバックを改善している。内部構造を見直した新型のアダプティブダンパーは作動領域の、スポーツ/スポーツ+/トラックの各モードに応じた調整幅を拡大。また、高速域における垂直方向のボディコントロールが大幅に向上していると、アストンでは説明している。
また、リアのスプリングとスタビライザーが、標準モデルよりハードになっている。どちらもターンインをシャープにし、トラクションを高め、フロントとともにリアのレスポンスも向上させるのが狙いだ。
ステアリングのギア比は標準車と同じ13.09:1だが、幅はそのままに径を1インチ拡大した21インチホイールと扁平率の小さくなったタイヤにより、グリップとフィードバックが増強されている。
フロントのボディ幅いっぱいに広がったスプリッターと左右のカナード、アンダーボディのターニングベーン、リアウイングといったエアロパーツは新造品だが、リアディフューザーはキャリーオーバー。全速度域でダウンフォースを生み、トップスピードでの発生量は標準モデルを最大200kg上回る。