【なぜ?】勢い止まらぬトヨタ・ルーミー 人気続く3つのワケ

公開 : 2021.09.11 05:45  更新 : 2021.10.13 12:01

タンクとの統合で勢い増す

2つめは、兄弟車として用意されていたタンクとの統合。

トヨタのディーラーが全店舗全車種扱いになったことで販売チャンネル別の兄弟車を用意する必要がなくなったことを受けてルーミーに一本化されたわけだが、これまでルーミーとタンクの2台に分かれていた販売台数が合算された結果、ルーミーとしての台数が増えたというわけである。

トヨタ・ライズ
トヨタ・ライズ

実のところ、2020年度(2019年4月~2020年3月)の販売実績をみると、ルーミー(ランク5位)とタンク(同11位)の販売台数を合計すると、1位に輝いたカローラの販売台数の約1.5倍に相当する売れ行きとなっていた。そのタイミングで兄弟車を1台にカウントすれば堂々の1位だったのだ。

すなわち、ワンボディとして考えればもともと売れていたけれど2車種に分かれていたので目立たなかった。

しかし1車種になったことで販売台数が合計された結果、際立つ数字になったと考えられる。

ところで、ルーミーの勢いが増すのと入れ替わるかのようにランキングが下がってしまったクルマが、同門のトヨタ内にある。「ライズ」だ。

ライズは2020年度販売ランキングでヤリスに次ぐ2位のポジションとなるなど、大好評のコンパクトSUV。2020年はランキング1位もしくは2位が定位置だった。

史上はじめてSUVとして販売ランキングの1位になった、ある意味時代を変えたクルマである。

実用的パッケージング

しかしそんなライズも、2021年に入ると5位、6位、7位あたりになることが増えてきた。

ただしこの動きはルーミーの浮上と直接関係があるわけではなく、新車効果が薄れたからと考えるのが自然だろう。

スズキ・ソリオ
スズキソリオ

トップレベルから転落したとはいえ、ラインキング10位以内に入る販売があれば十分に人気車種といえる。

さて、そんな人気モデルとなっているルーミーの魅力はどこにあるのだろうか?

それは、実用的なパッケージングに尽きる。

全長わずか3.7mのコンパクトボディながら居住スペースが広く、後席の開放感といったら驚くばかりだ。

後席に座ると足元スペース(前後席間距離)は大型セダンに匹敵するし、頭上のゆとりまで含めた「空間」という意味では居住性は大型セダンの後席の比ではない。

スライドドアで乗り降りがしやすく、一方で車体が小さいから狭い道や駐車場でも運転しやすいのがいい。生活に直結した便利な実用車なのだ。

軽自動車の主力ジャンル「スーパーハイトワゴン」の小型車版であり、実用性の高さが評価されているのだろう。

そんなルーミーのライバルといえばこのカテゴリーのパイオニアであるスズキ「ソリオ」だが、これだけ後発のルーミーが売れているにもかかわらず、ソリオはソリオでその影響を受けずにコンスタントに売れているのも興味深い現象。

ルーミーやタンクの登場により、このジャンルのマーケット自体が広がったのである。

話をトヨタに戻すと、ヤリス・クロスも含めたヤリスに、ルーミー、ライズ、そして先日は人気車「アクア」がフルモデルチェンジするなど、コンパクトカーにおいて全方位に向けた商品展開がおこなわれ、盤石の体制を築き上げたといえるのではないだろうか。

記事に関わった人々

  • 工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。

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