【時代遅れか、集大成か】ジャガーFペイスSVR試乗 5L V8もたらす「旬」の走り

公開 : 2021.09.12 05:45  更新 : 2021.10.13 15:16

ジャガーFペイスSVRに試乗。電動化までのカウントダウンの始まった今だからこそ乗れる旬の5L V8です。

V8 時代遅れか、集大成か?

撮影:Takamasa Miyakoshi(宮越孝政)
編集:Taro Ueno(上野太朗)

最近は純粋な内燃機搭載車に乗ると、「あぁ、これが本当に最後なのだろうか?」といったセンチメンタルな感情が入り混じる。

だからといって、ココ日本に住んでいたら、「次の愛車は脱ガソリン!」なんて宣言はとてもできそうにない。

ジャガーFペイスSVR
ジャガーFペイスSVR    宮越孝政

そもそもEVがメジャーになるほどのインフラがどう考えたって整ってはいないし、もしあなたが昭和の生まれのクルマ好きであるならば、まだしばらくの間はこれまで以上に内燃機関の存在を意識しながら楽しみたいという思いがあるはず。

何しろ、今エンジンはいい時代を迎えている。なにしろ次がない。

つまり、これ以上なく熟成された集大成のようなモデルがずらりと揃っているという見方もできるのである。

話がまわりくどくなってしまったのだが、ジャガーFペイスSVRのステアリングに乗り首都高速を流している最中、ふとこれこそ1つの集大成ではないか? という結論めいたことをひらめいたのである。

ジャガー初のSUVであるFペイス。その最強モデルであるSVRは2019年に本邦デビューしている。

今回試乗したのは内外装に手が加えられた2021年モデルだ。

以前試乗した場所はサーキットで、ストレスなく思い切り走れることに驚かされた。

とはいえ、それをもってFペイスSVRというクルマの立ち位置をすっきりと理解できたわけではない。

運動性能抜群のSUVに、打ち上げ花火以上の商品性があるのだろうか?

ハード的な煮詰めは「究極」

内燃機のトレンドは4気筒ターボに代表されるダウンサイジングを経て、現在は何らかの「電動」を盛り込んだものが主流だ。

そんな時代にあって、FペイスSVRのパワーユニットは大胆だ。

ジャガーFペイスSVR
ジャガーFペイスSVR    宮越孝政

5L V8スーパーチャージドで最高出力は550ps。たとえ高速道路でも性能のほとんどは使えないだろう。

それでも追い越しやレーンチェンジの際、躊躇なく驚くほど速やかに完遂できるのはSVRならでは。

狭い山道でも狙ったラインを鋭くトレースできる。2.1t超えとしては驚異的だ。

これが4気筒ターボなら、スロットルの踏み込みでギアが落ち、エンジンが唸り、ターボの過給が追い付いてようやく加速に移る。

ところがSVRのそれは、電気モーターにない迫力と音を伴いながら、電気モーターのように直接的に期待以上の加速Gを叩き出す。

一方、SVR専用のアシは前後方向のピッチングこそ少し許容するが、横方向はしっかりと抑えが効いている印象で、フラットな動きに終始する。

それでいて、普通のペースで走れば乗り心地も悪くない。ハード的な煮詰めは、やはり究極といえるレベルにある。

まだまだガソリン車に未来があると思われていた10年ほど前の感覚なら、これは発展途上の1台としてスルーされてもおかしくない。

けれどイギリスの新車生産期限が10年を切った今は事情が異なる。

純粋な内燃機関にこだわるのであれば、あえてFペイス最強のSVRをチョイスするのはありだと感じた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    宮越孝政

    Takamasa Miyakoshi

    1973年生まれ。スタジオワークを中心としたカメラマンのアシスタントを数年経験後、自動車雑誌の編集部員として、見習いに。編集部員時代に鍛えられた事は長距離の自走での移動と早朝ロケで早起きすること。その後、独立し、フリーランスとなる。クルマと関わりを持っていられることに幸せを感じる。愛車はルノー・カングー、日産スカイラインGT-R(R32)

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