【家族で乗れるスポーツカー】BMW 4シリーズ(最終回) 長期テスト 興奮を誘う6気筒

公開 : 2021.09.25 09:45  更新 : 2021.10.15 13:27

SUVが主役となった自動車市場に、2ドアクーペの居場所はまだあるのでしょうか。BMW 4シリーズの実力を、長期テストで英国編集部が確かめます。

積算7628km 胸のすくようなパフォーマンス

text:Piers Ward(ピアス・ワード)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
自動車ジャーナリストの仕事で楽しいことの1つが、毎週のように違うクルマへ乗れること。その反面、評価を付ける作業は簡単ではない。

1週間ほど乗れれば、新モデルの第一印象は充分にまとめられるだろう。だが、数時間でクルマの特徴を確かめることは難しい。特に近年のクルマはどれも良くできている。差別化では、個性や性格が重要な要素になる。

BMW 440i xドライブ・クーペ(英国仕様)
BMW 440i xドライブ・クーペ(英国仕様)

BMW 4シリーズ長期テストは当初420dでスタートし、途中からM440i xドライプへ交代している。どちらも同じくらい、清々しい時間を過ごせた。長期テストの終わりが残念でならない。

筆者だけでなく、2人の息子も残念がっていた。息子たちは、M440iが大好きだったようだ。特にエンジン音と、クーペボディの見た目を。車高は低めで、一層スピード感があった。フロントグリルに不満を感じるような歳ではない。

4シリーズで、息子との素晴らしい思い出ができた。BMWには少し違った思い入れを持ったまま、成長することだろう。自動車メーカーには、純EVの時代へ移っても、クルマが作り出す感情的な側面を忘れないで欲しいと思う。

筆者の心に強く残っていることは、前方の道路が空いた瞬間の喜び。直列6気筒ターボは、とても頼もしいエンジンだった。

374psと50.9kg-mで力強さは充分。穏やかな速度でも楽しいと感じさせる、繊細さとレスポンスも備えている。学校の送り迎えや週末の小旅行では、胸のすくようなパフォーマンスを短時間ながら何度も味わわせてもらった。

ドライブモードはコンフォートが1番

郊外の道の巧みな処理は、非常に印象的なものだった。乗り心地はしなやかで、燃費は3.0Lの6気筒ながら、マイルド・ハイブリッドで12.0km/L近くまで伸びる。ロングレシオな8速ATが組み合わされ、高速道路も安楽に走る。

ATをマニュアル・モードにしてパドルを弾けば、カーブの続く区間も素晴らしい。一方で、ドライブモードを切り替えることは殆どなかった。違いを確かめようと試してみたが、結局はコンフォート・モードが1番良いようだった。

BMW 440i xドライブ・クーペ(英国仕様)
BMW 440i xドライブ・クーペ(英国仕様)

BMW 4シリーズは完璧なクルマではない。特に筆者は、レーンキープ・アシストに改善を求めたい。ユーロNCAPの担当者やBMWの技術者は、機能がもたらす感覚の変化へ、もっと意識を払うべきだと思う。

もちろん、役に立つ技術ではある。ボタンを1度押せばオフになるという設定も、悪くはない。

BMWがiドライプと呼ぶインフォテインメント・システムは、全般的に秀逸の完成度。ロータリーダイヤルが付き、操作も非常に簡単だ。

気になる点もなくはなく、英国の仕様では、システムを通じて電話をつなぐと音声に遅延が出るようだった。自分が話し終えた後に、相手の声が聞こえるまで、しばらく待つ必要があった。

スマートフォンの一部のナビアプリを起動すると、ラジオが終了する現象も起きた。ただし、英国のBMWには同様の不具合は寄せられていないようで、筆者のスマートフォンとの相性の問題なのかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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