スバルWRX STI

公開 : 2014.04.17 22:40  更新 : 2017.05.29 18:42

■どんなクルマ?

どうやら、最新モデルには心躍らせられそうだ。

最新のWRX STIは、完全なる新しいモデルというよりもむしろ、先代の数々の欠点を丁寧に改めなおしたモデルだと言えよう。ボディに用いる素材の大部分は高張力鋼板が占め、未だに採用され続けている油圧ステアリングにはよりクイックなギア比を与えることによって、スバルのトップモデルとして相応しい剛性と機敏さを手に入れたのである。

クロスメンバー、サブフレーム、スタビライザー、ブッシュ類はそれぞれ僅かに強化されているが、サスペンションは、先代と同じくフロントにマクファーソン・ストラット、リアにダブル・ウィッシュボーンを採用しいている。6速マニュアルの味付けは見直されたが、AWDや機械式LSDは先代同様である。

以前同様に2.5ℓターボの4気筒ボクサー・エンジンが使用されているが、搭載位置は低められた上に、ECUのセッティングにも変更が加えられ良好なスロットル・レスポンスが得られるようになった。インタークーラーも拡大された。300psという数字は先代同様で、ユーロ6のエンジンに準ずるにもかかわらずCO2排出量は242g/kmとなる。

■どんな感じ?

先輩モデルの、上手く纏まったとは言えないフロントエンドのデザインと比べると見た目は幾分改善され、STIならではのグラマラスなボディは健在である。イギリスで市販されるモデルには特大のリアスポイラーは標準装備になる予定だそうだ。200mm前に引き出されたAピラーは全体のフォルムを崩すことなく、先代のインプレッサやランサーエボリューションⅨを彷彿させるノーズのデザインも、全体像にフレッシュな印象を与える重要な要素となった。

内装は冴えない先代のデザインより幾分良くなった。しかしながら、安っぽく柔らかいトリムや、カーボンもどきの素材からは良い印象は得られなかった。昨今の市場における高級志向に対応するためといえども、対応出来ているかといえば、そうとは言えない。

エンジンに関しては、相変わらず、たまに聞くのが嫌になる ”あの” とも言うべき高周波なインダクション・ノイズは残っている。基本的には旧型と同じエンジンではあるが、STIならではの最適なパワーとペースを与えてくれる仕上がりになったとスバルは主張する。300ps、0-100km/h加速は5.2秒で、この数値は最新のゴルフRよりも少しだけ劣るといったところだ。

小径化されたステアリングは、明確な反応をし、直進走行時も同様である。同時にセッティングがクイックになった分、常に操舵の微調整を強いられるのも事実である。この点においてはライバルの電動アシスト機構には一歩譲る。リニアな反応かというとそうでもなく、常にハンドルを注意深く握ることを余儀なくされる。だからこそとも言うべきか、コーナリング時は自分の望むとおりの操舵を可能にしてくれる。

先代のSTIは加速時の操舵においても不満が残ったが、40%に及ぶねじれ剛性とスプリングレートの強化により、充分に改善されている。ボディ強度も先代に比べて向上したため、コーナリング時の安心感も増し、またコーナリングスピードも上がった。コーナーのターンイン時には繊細なアクセルとステアリングの操作が必要ではあるが、その対価としてより素早く、積極的かつ安定したコーナリング・バランスを得たのである。

熱心なドライビングをする時においては、特にその良さを味わうことができる。リア・タイヤのグリップを上げることで、フロントの旋回能力を上げ、更にはセンターデフが高速コーナリングを可能にし、ライバルを突き放すことを可能にするのだとスバルは言う。また安全な場所で試みた4輪ドリフトも非常に楽しく満足できるものであった。

スバルはマニュアル・ギアボックスにも改良を加えたようではあるが、依然として「上質」とは言えない。11.6km/ℓという燃費も心から褒められたものではない。また、ボディ剛性を上げようとしたために感じられる後遺症も少し気になるところではある。単に乗り心地が悪いという意味ではないが、ほんのすこしばかりサスペンションのストロークに違和感を感じるのも事実だ。

■「買い」か?

もしあなた自身がお望みならば。ただしSTIは現在のイギリスにはフィットすることは難しい。もし、購入したとしてもCO2の排出量には目をつぶる必要がある。ただし、魅力的な値引き価格と機敏さでドイツ勢と肩を並べることはそう難しくない。

一方ではこのクルマには時代遅れの一面が多々あることは事実だ。油圧ステアリング、機械式デフ、マニュアル・ギアボックスや洗練に欠ける乗り心地。更には古くからの熱心なファンには大ウケするボクサー・エンジン。STIは依然、良い意味で男らしい良くできたクルマではあることに変わりないが、昔ほどファンの間で熱狂的に湧き上がるほどの魅力は、もはや薄れてしまったのかもしれない。

(ニック・カケット)

スバルWRX STI

価格 £28,995(493万円)
最高速度 256km/h
0-100km/h加速 5.2秒
燃費 11.6km/ℓ
CO2排出量 242g/km
乾燥重量 1534kg
エンジン 水平対向4気筒2457ccターボ
最高出力 300ps/6000rpm
最大トルク 41.5kg-m/4200rpm
ギアボックス 6速マニュアル

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