【EVシフト】現実的な答えは? ご近所グルマ「超小型モビリティ」の可能性
公開 : 2021.09.15 19:45 更新 : 2021.09.15 21:15
本格EVには、数100kgのバッテリー
実はEVに搭載されるバッテリーはことのほか重い。
日産リーフの標準的な30kWhモデルでバッテリー重量は315kgとされ、テスラ「モデルS」では500kgを超える。
両車ともエネルギー密度ではニッケル水素電池などよりもはるかに高いものの、それでもガソリン車など内燃機関には敵わない。
つまり、航続距離を伸ばすために多くのリチウムイオン電池を積めば、車重が増し、それはエネルギーを消費する要因を作ることにつながるわけだ。
しかもバッテリーは高価でもあり、多くのバッテリーを積めばそれだけ車両価格に反映されてしまう。
それでも、ガソリン車などと比べて満足いく航続距離は得られていない。
リチウムイオン電池も徐々に進化しつつあるが、状況が大きく変わるのは次世代電池と言われる「全固体電池」の登場を待つしかないのだろうと思う。
そうした中で注目が集まるのが超小型モビリティなのだ。ポイントは“ご近所グルマ”として必要にして十分なボディサイズとバッテリーを搭載したことにある。
地域交通における自動車の利用実態を調べると、移動距離は10km以内が7割を占め、乗車人数も2人以下が9割以上を占めるとされる。
つまり、大半のユーザーにとって、現在販売されているEVはオーバースペックとも言えるのだ。
45万円EV、宏光ミニEVの普及
たとえばバッテリー容量は、前出のトヨタ・シーポッドで9.06kWhにとどまり、これはリーフの1/3以下でしかない。
しかし、バッテリー容量が小さければ重量も軽くて済むから、その割に航続距離はフル充電で150km(WLTCモード)を確保できている。
もちろん、バッテリーが小さい分、価格も安く設定できるようになるわけで、それは購入のハードルも低くなり、普及もしやすくなるだろう。
この参考になりそうな例が中国の五菱汽車が販売している「宏光ミニEV」(宏光:hong guang=ホンガンと読む)にある。
このクルマは昨年秋に“45万円EV”として中国国内で発売され、台数ベースではテスラを上回る販売を達成したことでも注目された。
この低価格を実現できた理由は、やはりバッテリー容量を小さくしたことにある。
標準仕様で9.3kWhと、ほぼ日本の超小型モビリティと同等レベル。バッテリー容量が小さいことや、急速充電に対応しなかったことも低価格化を実現できた理由だ。
ただ、日本の超小型モビリティと違って最高速度は高速道路も走れる100km/hとした。
さらに中国では、EVを「新エネルギー車(NEV)」として補助金の支給対象とし、宏光ミニEVにも適用される。
これが奏功してとくに所得がそれほど伸びていない農村部で圧倒的な支持を獲得。充電設備などのインフラ整備も推し進め、出掛けた先でも気軽に充電できるようにしたことも、普及に拍車をかけたと言えるだろう。