【007のQに選ばれたE】BMW Z3と750iL、Z8 1990年代のボンドカーを比較 前編
公開 : 2021.10.03 07:05 更新 : 2021.10.12 16:22
ジェームズ・ボンドは英国製モデルを長年愛車に選んできましたが、1990年代、密接な関係を築いたのがBMWでした。英国編集部がその3台をご紹介します。
手頃にボンドカー気分を楽しめるZ3
ジェームズ・ボンド、通称「Q」が1995年のゴールデンアイで銀幕に戻ってきた時、ボンドカーとして選ばれるべきはアストン マーティンDB7だったかもしれない。だが、おとり捜査の相棒になったのはE36/7型の真新しいBMW Z3だった。
ドイツで設計され、アメリカで製造され、女性受けも良いオープン・スポーツカーだ。最新のアストン マーティンではないことに不満を感じた、古くからのファンもいただろう。でもBMW Z3なら、ずっと手頃にボンドカー気分をわれわれも楽しめる。
現在の中古車市場を見れば、数千ポンド(数十万円)も出せば状態の良い例が見つかる。今回取材にご協力いただいたトム・マルコムのZ3は走行距離9万km程度と、その中でも頂点にあるはずだけれど。
新車当時のZ3も比較的手頃な価格設定で、英国では1万9500ポンドから購入できた。そしてすぐに、ポルシェ・ボクスターやメルセデス・ベンツSLKといったライバルとの競争に巻き込まれた。
BMW Z3は、E36型3シリーズ・コンパクトのプラットフォームを流用。リア・サスペンションはマルチリンク式ではなくセミ・トレーリングアーム式となるものの、スケールメリットは得られた。
ホイールベースは約200mm短縮され、ステアリングのレシオは20%クイックに。トレッドもワイド化され、スポーティさを高めている。
ゴールデンアイへ登場したロードスターへ影響を受けたわけではないと思うが、当時BMWの子会社にあったローバーは、1995年にミドシップのMGFを発売。英国ではZ3より安価な価格帯で提供されている。
成熟した味わいのドライビング体験
英国へ導入されたZ3は、1.9Lの4気筒16バルブエンジンがベースグレード。ジェームズ・ボンドも運転したクルマだ。1.8LのZ3が英国にも届いていたら、MGFと一層良いライバル関係を築いていただろう。
Z3のクラムシェル・ボンネットは、改めて見ると低くワイド。ゴールデンアイではデスモンド・リュウェリン演じる「Q」が、ボンドに機能を説明する。「機敏なBMWで、5速ギア。全方向レーダーと自爆システムがついています」
後方からパラシュートが展開し、ヘッドライトの裏側にはミサイルが仕込まれていたらしい。もちろん、マルコムのZ3には特殊機能は備わらないが、見た目の仕様はほぼ同じ。明るめのアトランタブルーのボディに、ベージュのレザー内装が組み合わせてある。
ソフトトップは簡単に手動で開閉できる。折り畳めばトノカバーの下へ収まり、閉めるのも1分あれば充分だろう。エンジンは140psを発揮する1.9L 4気筒。唯一、トランスミッションが4速ATで違っている。
ダッシュボードには1990年代のBMWらしいメーターが並ぶ。スイッチ類や小物入れなどは、頑丈そうなプラスティック。エアコンとクルーズコントロール、シートヒーターが、快適性を高めている。
BMW Z3のドライビング体験は、成熟した味わいがある。例えば、マツダMX-5(ロードスター)よりも。
シャープで、重みに一貫性のあるステアリングホイールを回せば、エネルギッシュに回頭する。ボディロールはボンドカーへ想像する以上。後輪駆動のシャシーを思う存分振り回せるだけのパワーはない。