【007のQに選ばれたE】BMW Z3と750iL、Z8 1990年代のボンドカーを比較 前編

公開 : 2021.10.03 07:05  更新 : 2021.10.12 16:22

ボンドカーに選ばれた大型4ドアサルーン

当時のBMWは、1.9L 4気筒エンジンは6気筒に近い滑らかさと洗練性を備えると主張した。筆者はそこまでとは思わないが、独特のキャラクターは感じる。ツインカムで、喜んでレッドラインまで吹け上がる。

MTの方が、ドライバーの気持ちを高めてくれるだろう。だがATでもロックアップが働き、1速から3速まで高回転を充分に活用できる。

BMW 750iL(1995〜2001年/英国仕様)
BMW 750iL(1995〜2001年/英国仕様)

パフォーマンスは控えめで、ハンドリングはおっとり気味。ピアース・ブロスナン演じるジェームズ・ボンドがワインディングで悪者と戦っていた最中、従来より危険度が高かったことは想像できる。

Z3は、スター的な輝きが小さい。そのぶん、今でも手頃で楽しいロードスターとして、週末を謳歌できるという魅力がある。

特殊装備は、実際にはゴールデンアイで活躍することがなかった。Z3がどこまで高機能化されていたのか、疑問は残るところだ。

1997年、ブロスナンは再び戦いに呼び出された。トゥモロー・ネバー・ダイでボンドがドライブしたのも、再びBMW。スポーツモデルではなかったが、シリンダー数は3倍に。馬力も2倍以上に高められていた。

大型の4ドアサルーン、7シリーズはボンドカーとして珍しいチョイスではあった。だが、ベースのE38型7シリーズには最新技術が満載で、ガジェット・フェチの英国諜報部にはピッタリ。衛生ナビを標準搭載した、初の欧州車だった。

ジェームズ・ボンドは標準のオプションリストでは満足できず、防弾ガラスと催涙ガス装置を追加。ルーフには、格納式ミサイルを載せている。

伝統的なBMWらしいエレガントさ

英国諜報部は、携帯電話を7シリーズのリモコンへ改造。この映画で、最も記憶に残るスタントシーンを生み出す。

ボンドはリアシートに身を隠しながら、7シリーズをリモコンで運転。メルセデス・ベンツオペルで執拗に追ってくる悪党を、次々に片付ける。最後にリアシートから飛び降り、BMWを立体駐車場の屋上からレンタカー店めがけて落とし、自分の身を守った。

BMW 750iL(1995〜2001年/英国仕様)
BMW 750iL(1995〜2001年/英国仕様)

ボンドカーに用いられた、アスペン・シルバーのボディとブラック・レザーの内装という組み合わせは一般的なもので、映画を真似てコーディネートしたオーナーも多かったはず。今回ご登場願った7シリーズは、その内側でボンドカーに一致する。

オーナーのグルダーブ・レエシは、生粋のBMWファン。5.4L V型12気筒エンジンを搭載する、ホイールベースが長い750iLのオーナーだ。映画トランスポーターにも、この型の7シリーズは登場している。購入する動機にもなったという。

E38型の7シリーズは、伝統的なBMWらしさを湛えるエレガントなモデル。次期型のクリス・バングルのデザインとは対照的な、落ち着いたスタイリングを手掛けたのは、ボイケ・ボイヤーだった。

今でも贅沢な7シリーズのリアシートに身を沈めると、ウールの中に包まれたような、柔らかで静かな時間を過ごせる。車内は広々としていて、ブラインドが付き、リアシートの背もたれは電動でリクライニングできる。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ベン・バリー

    Ben Barry

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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