【電動化のミライ】トヨタ電動化戦略のキモ 「全固体電池」とは?

公開 : 2021.09.20 05:45  更新 : 2021.09.20 07:12

電動化で攻勢 トヨタの戦略は?

そんな中、トヨタは2021年9月7日、「電池・カーボンニュートラルに関する説明会」をオンラインでおこなった。

トヨタが電動車向けの電池について詳しく説明するのは2019年以来、約2年ぶりだ。

トヨタ・プリウス
トヨタ・プリウス

現時点で、トヨタは2030年の電動車発売台数見通しを800万台とし、そのうち4分の1に相当する200万台をEVとFCVにする計画だ。

電池については、1997年発売の初代プリウスを基点とするニッケル水素電池を引き続き生産し、先に発売された新型アクアから搭載した新構造「バイポーラ型」ニッケル水素電池の普及も進める。バイポーラ型とは、構造の簡素化することで電流を一気に送り込むことで瞬発力が上がる。

一方、リチウムイオン電池については大きく3つの手を打つ。

1つめは、これまでどおりの電解質に液体を使うタイプで、正極や負極などで材料のコストを抑えても品質を上げる。

2つめは、電池の構造を革新的に進化させる。

先に説明したように、リチウムイオン電池には、円筒型、角型、ラミネート型があるが、トヨタの説明資料ではそうした既存構造とは別の「新構造」という記載がある。

これは、円筒型の発展形なのか、それともこれまでまったく表に出なかったような特殊な形状をしているのだろうか。

そして3つめは……。

EVではなくハイブリッド基軸に

3つめが、全固体電池だ。

トヨタは全固体電池について、「電解質が固体」とシンプルに記載している。

トヨタが「新しい時代の愛車」を具現化した「LQ」
トヨタが「新しい時代の愛車」を具現化した「LQ」    トヨタ

その特徴は、正極と負極の間を動くイオンの動きがシンプルで速いこと。高電圧での耐性があること。そして、高温への耐性があることを挙げた。これにより、高出力、長い航続距離、充電時間の短縮が可能になる。

具体的な走行実験はもう始まっている。

2020年6月、「新しい時代の愛車」を具現化したコンセプトモデルLQをイメージした試作車で走行データの取得開始。

同年8月に「豊田ナンバー」を取得して公道走行も可能となっている。

今回の発表で驚いたのは、こうして開発中の全固体電池がハイブリッド車向けで先行発売されるということだ。

EVより先に、ハイブリッド車で実用化し、ある程度の量産効果を見込んだうえでEV向けに展開するという、ハイブリッド車を軸足として電動化戦略を進めているトヨタらしい戦略だ。

トヨタが全固体電池をハイブリッド車向けに量産するのは、早くても2030年代前半になりそうだ。

ただ、トヨタに限らないが、「全固体電池量産=EVが一気に普及」ということではない。

さまざまな電池技術が並行して開発され、価格が下がることで、EVがリーズナブル、かつ普段の生活やレジャーで十分な性能を発揮できるようになる。

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