【一新の狙いは?】仏プジョー ブランドのキーカラー、紺から黒へ

公開 : 2021.09.20 11:15  更新 : 2021.12.13 21:19

フラットなロゴにする理由

実はシトロエンプジョーと合併するまでは、紺地に黄色のダブルシェブロンという、プジョーに似た配色だった。

しかしタルボブランドが1980年代中盤に消滅すると、赤地に白のダブルシェブロンに変わっている。

新ロゴについて、グループPSAは「タイムレスかつ普遍的、そして多文化に対応するアイデンティティとなるライオンのフォルム。(中略)この紋章を掲げることでプジョーは新たな領域へ参入し、国際的な進出を加速させ、フランスならではのスタイル、ノウハウ、そしてフランスの生活の智慧を世界に向けて発信する」と説明している。
新ロゴについて、グループPSAは「タイムレスかつ普遍的、そして多文化に対応するアイデンティティとなるライオンのフォルム。(中略)この紋章を掲げることでプジョーは新たな領域へ参入し、国際的な進出を加速させ、フランスならではのスタイル、ノウハウ、そしてフランスの生活の智慧を世界に向けて発信する」と説明している。    グループPSAジャパン

なぜ赤なのかは、プジョーの紺に対比する色であるほかに、このブランドが本拠を置き続けてきたパリの紋章が赤字に白い帆船であり、やはり地域の色にちなんでいるという見方もできる。

21世紀に入って3Dデザインがポピュラーになると、プジョーのライオン、シトロエンのダブルシェブロンともに、立体的なデザインに変身した。地色を敷くのは違和感があるからだろう、どちらもブランド名の文字のみ色を使うことになった。

シトロエンからDSオートモビルが独立したのもこの時期で、同じように立体的なロゴとした。地色が黒になったのは、プレミアムブランドであることに加え、夜のパリをイメージしたという仕立てのためもありそうだ。

しかし近年、YouTubeなどのデジタルメディアがポピュラーになると、立体的なロゴマークはむしろ使いにくくなった。そこでフラットかつシンプルなデザインに変えるブランドが増えてきた。日産フォルクスワーゲンは代表例だが、プジョーの新しいロゴマークも、こうした時代の変化に対応したものと言える。

たしかにプジョーのオフィシャルサイトを見ると、ロゴマークやインデックスが写真の上に白抜きで表示されている。こうした使い方は、これまでのデザインでは難しかったはずだ。

FCAとの統合 身内と差別化も

さらにサイトを観察すると、たしかに黒ベースではあるがモノトーンになっているわけではなく、水色のアクセントカラーが各所に使われている。DSもそうで、ベースカラーは黒にチャコールを組み合わせ、文字などにシャンパンゴールドを起用することで独自性を出している。

キーカラーの変更は、グループPSAが今年FCAと統合し、ステランティスになったことも関係しているかもしれない。

東京・名古屋・大阪で開催されたカスタマー向けイベント「LION EXPERIENCE 2021」の会場は、黒基調の空間。展示された新型308は、ノーズに新ロゴを配置している。
東京・名古屋・大阪で開催されたカスタマー向けイベント「LION EXPERIENCE 2021」の会場は、黒基調の空間。展示された新型308は、ノーズに新ロゴを配置している。    AUTOCAR JAPAN編集部

合わせて14ものブランド(日本へは現時点で8ブランドを導入)を擁することになったわけで、それぞれに違う色を使うことは不可能だし、ブルーはランチアマセラティも使っている。

そこでプジョーは過去にも使用実績があるブラックにしたのかもしれないが、他のブランドのオフィシャルサイトを見ても、地色は白あるいは黒で、アクセントカラーでブランドイメージを表現していることに気付く。

アバルトアルファ・ロメオフィアットはすべて赤をイメージするイタリアンブランドであるが、赤の色調を微妙に変えて差別化を図っている。

さらに最初に紹介したプレゼンテーションでは、新しいロゴマークとキーカラーを採用した理由について、“上級市場への移行の体現”という説明があった。

今回と似たロゴマークが使われていた頃のプジョーは、403と404の2車種構成で、どちらも後輪駆動のセダンやワゴンが主力という、メルセデス・ベンツボルボのようなラインナップだった。一方のシトロエンにはDSが君臨していたが、同時に2CVも売っており、プジョーのほうが上質と捉えられていたはずだ。

プジョーをその頃のポジショニングに近づけることで、フランス車に詳しくない人にも、シトロエンやDSとの違いをわかりやすくしようという戦略に感じられた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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