【弱点は?】急速に普及する「デジタルインナーミラー」 メリット/デメリット を考える
公開 : 2021.09.21 19:45 更新 : 2021.10.11 13:55
弱点 焦点距離・LEDのチラツキ
デメリットとなるのは、デジタルインナーミラーを視認する際に、焦点が合わせにくくなるということだ。
光学式である従来型のミラーでは焦点距離は実像と同じであることから、前方から視線をミラーに移しても焦点はほぼ同じ。スムーズに後方を確認することができる。
ところが、デジタルインナーミラーでは後方を確認するのに、ディスプレイ上に焦点を合わせて視認する必要が出てくる。若いうちなら焦点を合わせるのも慣れで解消できると思うが、近くの焦点を合わせにくくなった高齢者にとってはかなりツライことになってしまうのだ。
デジタルインナーミラーで発生するチラツキ(フリッカー)も、従来型ミラーでは発生しなかった事象だ。
実はカメラを通して液晶ディスプレイで表示する映像は、連続する静止画で構成されている。
人間の眼は早い点滅になると連続して点灯しているように見えるが、これを利用したのが映画のフィルムで、1秒間に24コマの静止画を連続して映し出すことで動きを出している。
しかし、細かく速い速度で点滅するLEDランプは、液晶ディスプレイの表示と干渉してチラツキとして映し出されてしまう。
特に最近は信号機から街のネオン、クルマのヘッドライトに至るまでLED化が進んでおり、あちこちがチラついて見えることになる。
これを映像処理で解決する方法もあるが、それをすると表示の遅延にもつながってしまう。デジタルインナーミラーの場合、後方の映像を映し出すため、安全上の問題はないとは思うが、人によっては気持ち悪さを感じる可能性はある。
トンネルを抜けると……明暗差
そして、もう1つカメラを使うことで発生する問題がある。
それはカメラの能力としてダイナミックレンジが狭いことだ。ダイナミックレンジとは明暗差に対応できる能力のこと。
人間の眼は輝度差に対して柔軟に対応できるが、カメラは残念ながらそこまでの能力は備えていない。
従来型ミラーの場合は、鏡を通して人間の眼が明るさに対応するので問題ないが、カメラを介するデジタルインナーミラーではその能力がそのままディスプレ上に再現されてしまう。明暗差を補正するHDR技術もあるが、これも遅延を発生させる要因ともなり、採用はあまり進んでいない。
こうした弱点もあるため、デジタルインナーミラーでは、従来型ミラーに切り替えられるようになっている。
普段は従来型ミラーで使い、後方をより広く確認したいときはデジタルインナーミラーに切り替えるといった使い方ができるのだ。
また、フロントカメラも加えて、そのままドライブレコーダーとしての機能を持たせる例も増えている。
新型ハリアーでは音声こそ記録できないものの、前方と後方を同時記録できる“ドラレコ的”な機能を用意。市販品ではドラレコ機能を備えた機種が相次いで登場しているのも事実だ。
そうした流れから、弱点はあるものの、デジタルインナーミラーはますます採用例が増えていくのは間違いないとみていいだろう。