【ボンドカー・レプリカに撃たれる】ロータス・エスプリ S1とエスプリ・ターボ 後編

公開 : 2021.10.09 17:45  更新 : 2021.10.11 17:45

子供の頃に夢見たボンドカー。1人の英国人が手掛けた、ロータス・エスプリをベースにした精巧なレプリカ2台をご紹介します。

大間違いだった15年放置の不動車

執筆:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)
撮影:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
シリーズ1のロータス・エスプリは、車重900kgという軽量なミドシップならではといえる、繊細なバランスを備える。一度運転すれば、病みつきになるほどの魅力だ。

もし潜水艦として水中に潜ったら、それほど速くは進めない。しかし、路上なら興奮度満点。最高速度は公称の222km/hに届かないかもしれないが。

ホワイトのロータス・エスプリ・シリーズ1「私を愛したスパイ」ボンドカー・レプリカと、カッパー・メタリックのエスプリ・ターボ「ユア・アイズ・オンリー」ボンドカー・レプリカ
ホワイトのロータス・エスプリ・シリーズ1「私を愛したスパイ」ボンドカー・レプリカと、カッパー・メタリックのエスプリ・ターボ「ユア・アイズ・オンリー」ボンドカー・レプリカ

ファビアンの仕事は、ボンドカーのレプリカという点でも、英国製スーパーカーのレストアという点でも、非の打ち所がない。彼好みの特殊装備がなければ、コンクール・デレガンスで優勝も掴める完成度だといえる。

これほどの1台を作り上げたのなら、当面は満足できるはず。だが彼は、エスプリ・ターボをベースにしたレプリカへ突き動かされる。1981年の、「ユア・アイズ・オンリー」に登場したボンドカーだ。

「スキーを載せたボンドカーの、良くできたレプリカは見たことがありませんでした。そう気が付いたら、居ても立ってもいられなくなったんです」。苦笑いするファビアン。

「買ったのは安価な不動車。それが大間違いでした。同じ金額で走行可能なエスプリ・ターボも見つけたのですが、サンルーフが付いていたのでやめました。15年も放置されると、悲惨な状態になります。トランスミッションも、すべて腐っていました」

「バラすと、さらに多くの問題が。売り手はレストア途中だと話していましたが、殆ど何も手つかず。想像以上の災難でした。摩耗するす部品はすべてダメ。金属が腐食し、ハンドブレーキもダメ。サイドシルを外す必要がありました」

数度経験したエンジンブロー

ドライサンプのタイプ910エンジンも問題の塊だった。「彼はリビルドしたと話していましたが、大体の人はそう主張して売ります。部品をバラしてみると、かなりきれいで、新しい部品も多く使われていて安心しました」

「簡単に始動し、ブルックランズで新年のクラブ・ミーティングを楽しむまで、3週間位は調子良く回っていたんです。ところが、その帰り道にエンジンブロー」

ロータス・エスプリ・ターボ(英国仕様)「ユア・アイズ・オンリー」ボンドカー・レプリカ
ロータス・エスプリ・ターボ(英国仕様)「ユア・アイズ・オンリー」ボンドカー・レプリカ

「信じられず、ジャッキでエンジンを支えながらシリンダーヘッドを外すと、カムフォロアが破損していました。新しく見えていた部品も、すべてダメに。エンジンは、フルリビルドが必要な状態まで摩耗していたんです」

ファビアンは丁寧にエンジンを組み立て直し、何度もチェックを重ねた。その途中、油圧不足に気づく。圧力のリリースバルブの不具合が原因で、きれいに掃除。シリンダー内の確認も重ね、無事に命を吹き返した。一度は。

「3週間後に再びブローです」。苦々しい表情のファビアン。「これが原因か、と発見した瞬間は、ロータスでレース用エンジンを組んでいた経験を持つゲイリー・ケンプとの会話でした」

「リリースバルブを取り出したのか、彼が質問してきました。その部品は修理できないんです。その話を聞いて、すぐに抜き出しました。エッジはひび割れていて、あちこちに破片が付着し、オイルの潤滑不良を引き起こしていたんですね」

「結果的に、これまで4度もエンジンをダメにしています」

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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