【ボンドカー・レプリカに撃たれる】ロータス・エスプリ S1とエスプリ・ターボ 後編
公開 : 2021.10.09 17:45 更新 : 2021.10.11 17:45
撮影車両から採寸したスキーラック
それ以外のレストアは、比較的順調に進んだらしい。パナソニック社製のステレオを天井にマウントし、コンポモーティブの3ピース・アルミホイールをセット。ボディはカッパーファイアー・メタリックで輝かさせた。
塗装色は、友人が所有するエスプリの燃料キャップ裏から調色した。太陽光で、色あせていない部分だ。
レプリカを仕上げるうえで重要な要素となるのが、特徴的なスキーラック。ファビアン以外のレプリカにも、大体は装備されている。当初は、ロータスが用意していたものらしい。
航空会社でパイロットを務めるファビアンは、フライトスケジュールを利用し、撮影用車両が保管されているマイアミのディーザー・カーコレクションを訪ねた。細部にまで気が配られ制作されていたことに、感心したようだ。
「様々な角度からスキーラックを採寸し、写真も数百枚は撮影しました。当初は、スタイロフォームと呼ばれる発泡材を削って複製を試みましたが、屋根へ正しく固定できなかったんです」
「もう一度カーコレクションへ戻り、観察すると原因がわかりました。ルーフは湾曲していますが、スキーを左右対称に並べるため、わたしはラックの角度で調整していました。ですが、もとはスキーが屋根の形に合わせてねじれていたんですよ」
「そこでグラスファイバーで成形し、スチールで構造材を組みました。完成したスキーラックは、6mmのボルト8本でルーフに固定しています」
走りにも表れている努力の結果
「テールゲート側は中空なので、構造材に用いられるフォーム材で強化。穴を開けた部分は金属のパイプで補強してあります」。ボンドカーとして最後のピースは、オーリン・マークVIというスキー板。オレゴンの友人を介して調達した。
シリーズ1のエスプリと4年しか違わないが、2台のロータスには想像以上のギャップがある。エスプリ・ターボの方が遥かに複雑で、レストアに要した努力も大きかったことが伺い知れる。
その結果は、走りにも表れている。ロータスは新車当時、タイプ910エンジンにギャレットT3ターボを組むことで、最高出力213psを発揮すると主張していた。だが、鍛造部品を用いているおかげで、さらにパワフルに感じられる。
実際の加速力には、目を疑う。同年代のイタリアン・スーパーカーに匹敵すると思えるほどだ。
どちらのボンドカー・レプリカも、ディティールまで美しい。でも、この2台で筆者が強く惹かれるのは、真っ白に塗られたエスプリ・シリーズ1の方。
見事なシャシーバランスと精密な操縦性に、不安感のないロードホールディング性が融合。運転に夢中にさせる力がある。
エスプリ・ターボにもその多くが受け継がれているが、ターボの中間加速は少々尖すぎる。現実世界では、運転免許が危ぶまれるほど速い。ボンドカーらしくはあるけれど。