【最新トルクベクタリング検証】前編 ホットハッチ進化の立役者 LSDより自在 ドリフトモードも
公開 : 2021.09.25 11:05
左右にクラッチを備えるシステム
今回テストするのは、2000ポンド(約28万円)のパフォーマンスパックを追加したゴルフR、カナードを備えたA45 S、3500ポンド(約49万円)高いサーキットパック仕様のGRヤリス。これに、販売は終了している3代目フォーカスRSを加えているが、このトレンドに火をつけたこのマッチョなフォードをないがしろにはできないと考えたからだ。
この4台、価格もパワーもキャラクターもまったく違うが、共通しているのは、前輪より後輪へ多くのトルクを配分できる能力だ。言い換えれば、ドライバーの背中の神経をだまして、その走りどおり後輪駆動ベースだと信じ込ませる能力とも形容できる。
ゴルフRのシステムは、まさにそうした働きをする。エンジン出力はまず、トランスミッションを介してフロントのオープンデフへ送られる。そこからリアアクスルへは、アウトプットシャフトが伸びる。
以前のゴルフRはその先に備わるクラッチが、リアのオープンデフへと最大50%のトルクを分配していた。左右の配分は均等だ。ゴルフVIIの第5世代ハルデックスは油圧でプリロードがかけられ、電子制御ですばやく作動した。
しかしゴルフVIIIのRには、リアアクスル手前のクラッチが備わらない。その代わりに、前後アクスルを結ぶプロペラシャフトは、シンプルな一対のベベルギアを介してリアアクスルへ駆動力を伝達。その左右には電子制御クラッチが装備され、左右各輪へのトルク伝達量を調整する。
もしも左側のクラッチが完全に切れていれば、逆に右側はフルに接続される。ドリフトモードでは、リアに送られるエンジン出力の50%にあたる駆動力が、左右どちらか一方へすべて送り込まれる。ただし、100:0から0:100の間でいかなる比率にも調整可能。それこそ、クラッチ式ベクタリングの特性だ。