【ミドV8にマネッティーノ】トゥーリング・スーパーレッジェーラ・アレーゼRH95へ試乗 後編

公開 : 2021.10.01 19:05  更新 : 2021.10.14 16:06

天真爛漫に次々とコーナーを抜けていく

ドライバーの頭上に伸びるドーサルスクープから、空気を吸い込む電動ファンのノイズも聞こえる。エンジンの冷却機能を担う重要な吸気口だが、モーター音が大きく、気温が低めでも車内へ明確に届いてくる。あまり聞き心地は良くない。

しかし30分ほど走ると、ステアリングホイールを手のひらで激しく操っていることに気付く。アレーゼRH95の秀逸なバランスに一度気づけば、些細なことは忘れてしまう。

トゥーリング・スーパーレッジェーラ・アレーゼRH95(欧州仕様)
トゥーリング・スーパーレッジェーラ・アレーゼRH95(欧州仕様)

ステアリングホイールの反応はとてもクイック。アレーゼRH95は、見えない軸を中心に回転するギアのように、ラインを保ちながらコーナーを抜けていく。天真爛漫に次々と。

チャレンジングなカーブが続く道を、ハイスピードで駆けていく。ドライバーの心を、デトックスしてくれるようだ。制御は難しくない。猛烈といえるような速度を、受け入れてくれる。

素晴らしいクルマだが、残念ながらそう簡単には手に入らない。R.Hというイニシャルのオーナーに、今回の試乗車は売却済み。95という数字は、トゥーリング社の創業から95年目を指している。95台作られるわけではない。

R.Hという人物は、アレーゼの技術開発へ資金提供を行ったという。デザイナーのルイ・ド・ファブリベッカーズ氏が話すように、このプロジェクトのディレクションにも大きな影響を与えたという。

「お客様は1950年代や1960年代のスポーツカー、特にアルファ・ロメオ33ストラダーレをイメージされていました」。1967年に生み出された8気筒ミドシップ・アルファとのつながりは、ドア付近の造形に見て取れる。

目標生産台数は18台 価格は非公表

シザーズドアは、ルーフ側までガラスが入る。ドアやテールゲートなど、すべてを開くと、閉じている時と同じくらい壮観な見た目を生み出すことまでも、結びつきを感じる。

アルファ・ロメオは、33ストラダーレを18台製造した。トゥーリング・スーパーレッジェーラ社も、アレーゼRH95を18台製造する計画を立てているという。

トゥーリング・スーパーレッジェーラ・アレーゼRH95(欧州仕様)
トゥーリング・スーパーレッジェーラ・アレーゼRH95(欧州仕様)

価格が未公表だとはいえ、これほど魅力的なミドシップ・スーパーカーとしては、控えめな目標に思える。コスト面で明らかなことは、高度な職人で、1台あたり延べ5000時間の工数が必要だということだけ。

仮に、経費も含めて1時間当たり200ポンド(3万円)で計算すれば、100万ポンド(1億5200万円)になる。さらに開発コストや高級素材、多くの部品代が別に必要となる。150万ポンド(2億2800万円)くらいには登るだろう。ベース車両も別だ。

目がくらむ数字だが、実際にこの手の市場は存在している。ハイエンドのスーパーカーやラグジュアリー・モデル、クラシックカーが、その存在を証明している。

トゥーリング・スーパーレッジェーラ社も、これまでに50台以上の限定モデルを販売してきた。多くが、億単位の価格の代物だ。

エキゾチックな魅力にあふれるアレーゼも、われわれの多くには手の届かない場所にある。だが、このようなコーチビルダーによる限定モデルの生産は、クルマ好きとして歓迎すべきことだといえる。

何しろ、アレーゼは息を呑むほど美しいのだから。

トゥーリング・スーパーレッジェーラ・アレーゼRH95(欧州仕様)のスペック

英国価格:150万ポンド(2億2800万円/予想)
全長:4782mm
全幅:1982mm
全高:1259mm
最高速度:330km/h(予想)
0-100km/h加速:3.0秒(予想)
燃費:8.8km/L
CO2排出量:260g/km
車両重量:−
パワートレイン:V型8気筒3902ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:670ps/6200-8000rpm
最大トルク:77.4kg-m/3000rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ブレンナー

    Richard Bremner

    英国編集部
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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