【三菱、ダットサンでも経験】シトロエンCEO、ブランドの将来を語る 明確な存在意義と流動的なクルマ作り

公開 : 2021.09.29 18:05

シトロエンのヴィンセント・コビーCEOは、激動の時代を迎える中でブランドの将来について語りました。

シトロエンの哲学的な存在意義

執筆:Jim Holder(ジム・ホルダー)
翻訳:Takuya Hayashi(林 汰久也)

シトロエンの現CEOであるヴィンセント・コビーは、三菱ダットサンブランドでも経験を積んだ人物だ。これまでのキャリアは、他人の親でも「素晴らしい」と言わざるを得ないようなもので、あらゆる段階で学界やビジネス界から称賛を受けてきた。

52歳のフランス人であるコビーは、哲学者のような一面も持っており、聴衆を惹きつける鋭い感覚の持ち主だ。最近英国を訪れた際には、フィッシュ&チップスを注文したり、AUTOCARの記事から一節を引用したりするなど、英国人記者を惹きつける魅力がある。

シトロエンC5 X
シトロエンC5 X

2020年1月にシトロエンのトップに就任し、おそらく戦時中に匹敵するような洗礼(パンデミックや電動化の波)を受けながらも、明確な見解を持って陣頭指揮を執ってきた。彼は、上司であるカルロス・タバレスに非常によく似ている。

シトロエンブランドの意義について、彼の答えは明確だ。彼自身がよく使う言葉を借りれば、闘争(militant)だ。

「わたしは、装備を増やしたり、航続距離を伸ばしたりと、最終的に重量を増やすような競争には賛成できません。ニーズに合った勇気のあるクルマ作りをして、移動の自由を提供し続けることに集中してほしいのです」

英国では、小型EVのアミの話題が先行しているが、彼はこのモデルを「シトロエンの表現の1つにすぎない」と言い切る。

「モビリティは人生を与えてくれるものですが、わたし達は人生が制限される世界に突入しています。移動にかかるコストが制約となるでしょう」

「わたしはそれがイノベーションの引き金になると考えています。奇をてらったものではなく、現実の問題にソリューションを提供しなければならないのです」

状況に合わせて進化する流動性

SUV、セダン、ワゴンの3つの顔を持つ新型C5 Xは、この哲学の一例だ。

「過去にやったことを繰り返す義務はありません。同業者の中には、同じクルマを8世代に渡って使っている人もいますが、わたし達は自分たちが置かれている状況に合わせて進化していきたいのです」

ヴィンセント・コビー
ヴィンセント・コビー

「C5 Xは流麗でエレガント、そして流動的であり、かさばるSUVではありません」

もう1つの好例は、シトロエンの特徴であるスタイリッシュな倹約精神を具現化した、新興市場向けのコンパクトカー、New C3だ。

「経済危機、国家債務、世界的な混乱、資源不足、インフレ、政情不安、環境問題など、わたし達は何か月もの危機に直面しています」

「答えは、手頃な価格のクリーン・モビリティです。8万ポンド(約1200万円)もするEVは、クリーンではありますが、手の届く価格ではありません」

あらゆるブランドの中で、シトロエンはおそらく最も革新的な可能性を秘めている。前任者が始めたことを、コビーは自信をもって加速させている。しかし、大きな問題は、このような深く論理的な道を歩む準備ができている自動車購入者が十分にいるかどうかだ。

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