【運転をシンプルでスマートに】スズキ・アクロス(最終) 長期テスト 優秀なPHEV

公開 : 2021.10.10 09:45  更新 : 2021.10.11 17:45

トヨタRAV4のOEMとなる、スズキ・アクロス。PHEVのSUVとしての実力や、RAV4との違いなどを長期テストで英国編集部が確かめます。

積算1万8798km ステアリングホイールから異音

text:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
スズキ・アクロスの、トヨタ水準の組み立て品質を疑うようなことが起きた。長期テストの開始から約半年が経つが、内装のどこからかカタカタと音がする。

ステアリングホイール中央のボス付近にある、何かの部品から擦れたような音が出ている様子。乗っているうちに緩みが出たのだろう。機能的な不具合はないものの、以前よりうるさいとは確実にいえる。

スズキ・アクロス 2.5 PHEV E-FOUR E-CVT(英国仕様)
スズキ・アクロス 2.5 PHEV E-FOUR E-CVT(英国仕様)

積算1万9551km 小物が滑り出るトレイ

スマートフォン以外にも小物を置くであろうダッシュボード下のトレイには、デザイン上のミスがある。トランスミッション・トンネルから滑らかに傾斜が続いていて、追い越し加速などの度にトレイのモノが滑り出てしまう。

わたしの場合はUSBケーブルで繋いでいるので、スマートフォンだけは落ちないのだが。

スズキ・アクロス 2.5 PHEV E-FOUR E-CVT(英国仕様)
スズキ・アクロス 2.5 PHEV E-FOUR E-CVT(英国仕様)

積算2万821km 日常的な利用を上手にこなす

この長期テストが始まる数ヶ月前、どんな内容になるのか想像でなかった。プラグイン・ハイブリッド(PHEV)に乗ることについてもそうだし、スズキ・アクロスに限らす、同価格帯のクロスオーバーに乗ることにいても。

すでに読者の中には、この手のモデルをご経験済みの人もいるだろう。長期テストは終了となるが、スズキ・アクロスは筆者を驚かせるクルマだった。

スズキ・アクロス 2.5 PHEV E-FOUR E-CVT(英国仕様)
スズキ・アクロス 2.5 PHEV E-FOUR E-CVT(英国仕様)

日常的な自動車利用を、とても上手にこなしてくれることに深く感心した。予想外といえるほどに。お別れが寂しい。

シンプルでスマートにしてくれる品質

乗り始めた頃は、認知度の低い300馬力のファミリー・クロスオーバーを運転するという、目新しさに気が奪われていた。バックミラー越しに観察してくるドライバーや、歩行者の反応を見るのは、面白いものだった。

青信号のダッシュでは、0-100km/h加速6.0秒の俊足も披露できる。周囲のドライバーは、一層興味を掻き立てられただろう。

スズキ・アクロス 2.5 PHEV E-FOUR E-CVT(英国仕様)
スズキ・アクロス 2.5 PHEV E-FOUR E-CVT(英国仕様)

EVモードにも夢中になった。1Lでもガソリン消費を少なくしようと、平均燃費を向上させる挑戦は面白い。実際、筆者は何度も試した。

少し時間が経過し、アクロスを広く理解できるようになると、全体の良さに気付かされた。クルマの利用をシンプルでスマートにしてくれる、品質が備わっている。乗り方が正解かどうか、気にする必要もない。

アクロスの実用性の高さは、暮らしの質も高めてくれる。使い勝手の良い荷室があり、装備も充実。一般的な給電ポートも付き、クルマで撮影機材の充電も可能だった。

筆者は以前にランドローバー・ディスカバリー・スポーツの長期テストを担当していたことがあるが、荷室の使い勝手では、アクロスの方が僅かに勝っているとすら感じる。

インテリアの見た目や質感は、特別でもないし魅力的とはいい難い。でも、機能的だ。

作り付けはしっかりしていて、ブラインドで操作できるスイッチ類も好感触。シートヒーターと熱線入りステアリングホイール、バックカメラがないクルマには、今後は躊躇してしまうだろう。

内装の耐久性も悪くない。ダッシュボード下のトレイなど、不満はなくもないが、居心地は良い。長旅でも疲労は感じにくく、運転の安楽さも実感した。

記事に関わった人々

  • 執筆

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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