【「SUV=4WD」信者は時代遅れ?】増える「2WDのSUV」 設定されるワケ
公開 : 2021.10.03 05:45 更新 : 2021.10.13 12:01
流行りのSUVで売れているのは4WDではなく2WD。2WDのSUVは何のために設定されているのか解説します。
流行のSUV でも4WDは……
「2WDのSUVはどうして存在するのか? 買う意味が分からない」という人もいるかもしれない。
しかし、それは今では古い考え方だという自覚を持ったほうがいいだろう。
たとえば今年春に登場し人気を博しているホンダ「ヴェゼル」の新型。約3万台を受注した発売後1か月のデータを見ると、4WDを選んだ人はわずか19%。
「大多数」といっていい81%の人は2WD(FF)を選んでいるのである。
これは何も、ヴェゼルが特別というわけではない。
昨年9月頃に発売されたトヨタ「ヤリス・クロス」も、初期の受注データを見ると約80%のユーザーが4WDではなくFFを選んでいる。
今や、SUVのなかでも4WD比率が高いのは、トヨタ「ランドクルーザー」やスバルのSUVなど「全車が4WD」という車種を除けば、トヨタ「RAV4」などごく一部のモデルに限られるのだ。
RAV4は現行モデル発売から半年ほどの受注データを見ると約90%が4WDだったが、これはかなり特殊な例である。
これはなにも日本に限った話ではない。
欧州では日本以上にクロスオーバーSUVが流行していて、今や新車販売のうち約40%がSUVになっているほどである。
そんな欧州で2020年に欧州でもっとも売れたSUVはルノー「キャプチャー」だったが、同車はFF比率が高いどころか「そもそも4WDが設定されていない」という状況。
欧州のクロスオーバーSUVのなかでも売れ筋となっているコンパクトクラスは、キャプチャーのように4WDをラインナップしない車種が少なくないのだ。
それはすなわち「4WDを欲しがる顧客が少ない」と解釈すべきほかない。
「ジープ」でも主流は2WD
では、SUV発祥の地である北米はどうか?
統計データを見つけることはできなかったが、「オフロードイメージの強い『ジープ』でも2WD比率が高い」というのは彼の地でも定説だ。
たしかに、筆者は現地でレンタカーとして手頃なサイズのSUVを借りたことが何度もあるが、ジープブランドも含め4WDだったことは1度しかない。
そのうえ、ここ数年でSUV比率が高まったことで街を走るSUVが増え、2WD比率はさらに高まっていると推測される。
そもそも、2WDと4WDの違いとメリットはどこにあるのか。
道を走っているクルマの多くは2WD(前輪駆動もしくは後輪駆動)で、エンジンやモーターが生み出した駆動力を前輪駆動なら前輪、後輪駆動なら後輪と2本のタイヤだけで路面へ伝える。
一方、4WDは前輪と後輪の両方を使って駆動力を路面へ伝える仕掛けになっている。
力を分散して伝えるから滑りやすい路面でもスリップしにくいのが長所だ。
そんな4WDはルーツをたどればオフロードでの走破性を高めるために生み出された仕掛けということもあり「オフロードを走るSUVは4WD」というイメージが強いといっていいだろう。
何を隠そう、日本は世界的に4WD比率が高い国である。
しかし、多くの人はオフロードを走るわけではない。
ではどうして日本のユーザーが4WDを好むかといえば、それは雪に備えての4WDだ。