【歴代ボンドカー傑作選】映画「007」シリーズ 世界最高のスパイが選ぶ名車と珍車
公開 : 2021.10.09 06:05
アストン マーティン・ヴァンキッシュ(2002年「ダイ・アナザー・デイ」)
嘆かわしいのは、救いようのない駄作に出演したことだ。車体が透明になる光学迷彩を採用するなど不思議な仕様だったが、クルマ自体は美しいだけでなく、筋肉質で威圧感もあった。
ロボット化されたギアシフトがあまりにもひどいため、アストンはマニュアルのトランスミッションを後付けすることになったというような、真の意味での欠陥を持つこのクルマは、スーパーヒーローのキャラクターにふさわしいと言える。
アストン マーティンDB10(2015年「007 スペクター」)
DB10が史上最高のボンド・カーである理由は、既製モデルの改造ではなく、映画のためだけにオーダーメイドされたという事実にある。そして、劇中ではボンドのために用意されていたわけではないという点も忘れてはいけない。
映画をご覧になっていない方のために説明すると、ボンドはこのクルマを同僚の009から拝借した。そして、ジャガーC-X75とカーチェイスを繰り広げた末、ローマ市内を流れるテベレ川へクルマを乗り捨て、自身は屋根から脱出した。
DB10はV8ヴァンテージをベースに再設計したもので、スタントカーやプロモーション用を含め10台が作られた。アストン マーティンのマレク・ライヒマン率いるチームが自社でスタイリングし、ボンドにとって最高の移動手段に仕上げられた。
2017年に発表された新型ヴァンテージは、このDB10の外観を十二分に踏襲している。
ジャガーC-X75(2015年「007 スペクター」)
ボンドは多少困難な状況に挑むことも厭わない勇敢な男だが、C-X75に乗ったミスター・ヒンクス(デイヴ・バウティスタ)はどうだろう?ボンド映画のカーチェイスは、DB5がフェラーリF355に追いつくなど、あまりありそうにないものだった。
もちろん、映画で使用されたC-X75には、コンセプトカーに見られたハイブリッド・パワートレインや超クールな小型ジェットタービンは搭載されていないが、悪役でありながらDB10を丸ごと飲み込んでしまいそうな雰囲気があった。
残念ながら市販化には至らなかったものの、少なくとも劇中では、ジャガーの野心的なスーパースポーツカーが動いているところを見ることができた。しかも、オーダーメイドのアストンとの一騎打ちだ。眼福である。
アストン マーティンDB2/4 MkIII(1964年「ゴールドフィンガー」)
「ゴールドフィンガー」でボンドがDB5に乗っていることは誰でも知っているだろう。しかし、最初はそうではなかった。映画が作られる前、イアン・フレミングが書いたボンドシリーズ7作目となる同名の小説があった。その中でボンドがジャガー3.4の代わりに選んだのはDB2/4 MkIIIで、映画と同様に「改良」が加えられていた。
強化バンパー、無線探知機、運転席の下に隠されたコルト45などが装備されている。ドライビングマシンとしてのMkIIIは、DB5よりもはるかに切れ味がよく、人を魅了するパワーがあったということも、あまり知られていない事実である。