【9.4L V12の最高傑作】1935年製 イスパノ・スイザJ12 美しい姿に隠す力強さ 前編
公開 : 2021.10.23 07:05 更新 : 2022.08.08 07:22
1960年に平坦地で165km/hを記録
英国人オーナーで知られていたのは、著名なカーコレクターでブガッティ・マニアのピーター・ハンプトン氏。ソーチック社が手掛けた2シーター・ロードスターを所有し、最高のクルマだと自負していた。
1944年のノルマンディ上陸作戦に加わったハンプトンは、戦闘で負傷。片腕が不自由になってしまったが、J12の豊かなトルクが、おぼつかない変速を助けたという。「もし砂漠の島を1台限りで走るなら、イスパノ・スイザJ12を選ぶでしょうね」
ハンプトンからJ12を譲り受けたのが、アメリカに住むトム・パーキンス氏。ブガッティ・タイプ57SCなど錚々たるコレクションを保有していた。晩年にコレクションを手放すが、2016年にこの世を去るまで、J12は残していたらしい。
自動車記者のロナルド・バーカーもJ12を試乗し、感銘を受けている。1960年、AUTOCARの電子速度計を用い、制限速度のなかった英国M1号線の平坦地で165km/hを記録。緩やかな下り坂では168km/hに届いた。
J12の車重は2.5t。フルスロットルでの燃費は、3.2km/Lだった。
バーカーは、「V型12気筒は図書館のように静か。エンジンの存在を車内で感じるのは、クランクシャフトが最高に回転している時のみです。ブレーキも安心感があり、高速域でも安定しています」。と、1960年1月のロードテストでレポートしている。
この続きは後編にて。