【2.5L直6か3.5L V8か】ローバーP6 3500Sとトライアンフ2.5 PI 1970年代の好敵手 前編
公開 : 2021.10.24 07:05 更新 : 2022.08.08 07:22
ミケロッティ・デザインのトライアンフ
ちょうど同じ頃、トライアンフの開発現場でも大型の4ドアサルーンが仕上げの段階に入っていた。後に2.5 PIへ進化する、2000だ。
そのルーツは、ランチア風のトランスアクスル・レイアウトや、逆傾斜したリアウインドウなどが試されたセブ・プロジェクト。レイランド・グループの量産車として仕上がった時には、ずっと大人しくなっていたが。
トライアンフ2000の特長となるのが、モノコック構造のボディ。先代に当たる、スタンダード・ヴァンガードにも積まれていた、2.0L 6気筒エンジンが初期の動力源になった。
サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式で、リアがセミトレーリングアーム式という、コイルスプリングの四輪独立懸架。スタイリングは、スピットファイアで実力を発揮したジョヴァンニ・ミケロッティ氏によるものだ。
サメのようにシャープでワイドなフロントノーズと、上端がカットされたリアのホイールアーチがトレードマーク。スポーティな雰囲気は、クルマのスペックにも反映している。
4気筒エンジンが主流だったような市場に、滑らかな1998ccの直列6気筒エンジンを送り込んだトライアンフ。動力性能だけでなく、洗練性や燃費など、多くの面でアドバンテージがあった。
大進歩といえる内容を備えていたローバーP6だったが、エンジンは1978ccの直列4気筒。活発ながらノイズは大きく、91psという最高出力も力不足は否めなかった。それに気付いたローバーは5年という短くない時間を掛け、次の一手を打つ。
V8と直6で競い合った動力性能
P6の動力性能を高めるべく、ローバーが選んだ手段は比較的単純なもの。1968年、広いエンジンルームに収まったのは、ガスタービンではなく、ビュイック社製の3528cc V8エンジン。P5での実績があった。
オールアルミ製で車重を大きく増やすことなく、最高出力148psを獲得。ローバーP6 3500を名乗り、パフォーマンスは大幅に高められた。
0-97km/h加速は10.5秒。183km/hという最高速度を獲得し、エグゼクティブ・サルーンから英国版マッスルカーと呼べるモデルへ、P6はステップアップした。
ローバーの動きを事前に知ったカンリー工場の技術者も対抗。1967年8月にTR5でデビューしていた、燃料インジェクションの152psユニットの流用を決める。トリプル・キャブレター級の性能といえたエンジンだ。
ストロークを伸ばすことで、排気量は2498ccへ拡大。穏やかなカムシャフトと専用の排気系統が組まれ、最高出力は134psに抑えられていたが、大型サルーンとして不足ない低速トルクを獲得。2.5 PIを名乗ることになった。
動力性能は向上したものの、デビューから数年を経て新鮮味も薄れていた。そこで1969年、2000と2.5 PIはフェイスリフト。Mk2のデザインを担当したのも、引き続きミケロッティだ。
トライアンフ・スタッグ風のフロントマスクを取り入れ、水平に伸びたテールライトと大きなトランクリッドでリアをイメージチェンジ。インテリアも、スタッグに似たデザインで一新されている。
クリーンなダッシュボードには、ドライバーを包むようにカーブしたメーターパネルを採用。長いモデルライフに備えた。
この続きは後編にて。