【2.5L直6か3.5L V8か】ローバーP6 3500Sとトライアンフ2.5 PI 1970年代の好敵手 前編

公開 : 2021.10.24 07:05  更新 : 2022.08.08 07:22

ミケロッティ・デザインのトライアンフ

ちょうど同じ頃、トライアンフの開発現場でも大型の4ドアサルーンが仕上げの段階に入っていた。後に2.5 PIへ進化する、2000だ。

そのルーツは、ランチア風のトランスアクスル・レイアウトや、逆傾斜したリアウインドウなどが試されたセブ・プロジェクト。レイランド・グループの量産車として仕上がった時には、ずっと大人しくなっていたが。

トライアンフ2.5 PI Mk2(1969〜1975年/英国仕様)
トライアンフ2.5 PI Mk2(1969〜1975年/英国仕様)

トライアンフ2000の特長となるのが、モノコック構造のボディ。先代に当たる、スタンダード・ヴァンガードにも積まれていた、2.0L 6気筒エンジンが初期の動力源になった。

サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式で、リアがセミトレーリングアーム式という、コイルスプリングの四輪独立懸架。スタイリングは、スピットファイアで実力を発揮したジョヴァンニ・ミケロッティ氏によるものだ。

サメのようにシャープでワイドなフロントノーズと、上端がカットされたリアのホイールアーチがトレードマーク。スポーティな雰囲気は、クルマのスペックにも反映している。

4気筒エンジンが主流だったような市場に、滑らかな1998ccの直列6気筒エンジンを送り込んだトライアンフ。動力性能だけでなく、洗練性や燃費など、多くの面でアドバンテージがあった。

大進歩といえる内容を備えていたローバーP6だったが、エンジンは1978ccの直列4気筒。活発ながらノイズは大きく、91psという最高出力も力不足は否めなかった。それに気付いたローバーは5年という短くない時間を掛け、次の一手を打つ。

V8と直6で競い合った動力性能

P6の動力性能を高めるべく、ローバーが選んだ手段は比較的単純なもの。1968年、広いエンジンルームに収まったのは、ガスタービンではなく、ビュイック社製の3528cc V8エンジン。P5での実績があった。

オールアルミ製で車重を大きく増やすことなく、最高出力148psを獲得。ローバーP6 3500を名乗り、パフォーマンスは大幅に高められた。

ベージュのローバーP6 3500Sと、レッドのトライアンフ2.5 PI Mk2
ベージュのローバーP6 3500Sと、レッドのトライアンフ2.5 PI Mk2

0-97km/h加速は10.5秒。183km/hという最高速度を獲得し、エグゼクティブ・サルーンから英国版マッスルカーと呼べるモデルへ、P6はステップアップした。

ローバーの動きを事前に知ったカンリー工場の技術者も対抗。1967年8月にTR5でデビューしていた、燃料インジェクションの152psユニットの流用を決める。トリプル・キャブレター級の性能といえたエンジンだ。

ストロークを伸ばすことで、排気量は2498ccへ拡大。穏やかなカムシャフトと専用の排気系統が組まれ、最高出力は134psに抑えられていたが、大型サルーンとして不足ない低速トルクを獲得。2.5 PIを名乗ることになった。

動力性能は向上したものの、デビューから数年を経て新鮮味も薄れていた。そこで1969年、2000と2.5 PIはフェイスリフト。Mk2のデザインを担当したのも、引き続きミケロッティだ。

トライアンフ・スタッグ風のフロントマスクを取り入れ、水平に伸びたテールライトと大きなトランクリッドでリアをイメージチェンジ。インテリアも、スタッグに似たデザインで一新されている。

クリーンなダッシュボードには、ドライバーを包むようにカーブしたメーターパネルを採用。長いモデルライフに備えた。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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