【2.5L直6か3.5L V8か】ローバーP6 3500Sとトライアンフ2.5 PI 1970年代の好敵手 後編
公開 : 2021.10.24 17:45
3.5L V8エンジンが生む余裕
車内の細かな部分に目がいってしまうが、トライアンフの直列6気筒エンジンのたくましさを引き出せば、そんなことは忘れられる。2000と2.5 PIとの違いが明確になる。
最高出力は、トライアンフTR6との部品共有を理由に、1972年に134psから125psへ引き下げられた。だが、しなやかなリアのサスペンション・スプリングを圧縮し、フロントノーズを持ち上げる勢いで2.5 PIは加速する。
オーバードライブ付き4速MTは、操るのが楽しい。レバーのストロークが長いのも、個性の1つだ。このクルマにはクリス・ウィター社製のスポーツエグゾーストが付き、回転数が高まるほどにサウンドがドライバーの心にも響いてくる。
ローバーP6の方は、より堂々とした印象。エンジンのお目覚めも静か。3.5LのV型8気筒らしい音響を楽しめるようになるのは、シフトダウンしてアクセルペダルを踏み込んだ時だけだ。
評判が良いとはいえなかった4速MTだが、リーブのクルマの場合は滑らかにシフトレバーを動かせ、ゲートへの入りも良い。社外品のサーボが付けられ、軽いクラッチペダルが印象を高めている。
トライアンフ2.5 PIより車重は40kgも重いが、P6 3500Sに積まれる3.5LのV8エンジンは余裕綽々。2速で80km/h位までの加速力は、ライバルより明らかに鋭い。
ファイナルレシオもショートながら、最高速度は201km/hとローバーの方が30km/h近く高い。太い低速トルクのおかげで、市街地でも扱いやすい。
過去1番のライバル関係にあったサルーン
これまでのトライアンフとローバーで、1番のライバル関係にあったのが、P6と2000だ。中間管理職の心を掴むべく、直接的な対決がサルーンを通じて繰り広げられた。1970年代後半に入り3500Sと2.5 PIへ進化しても、その競い合いは続いた。
動力性能や車内の豪華さはほぼ同等。信頼性に欠いたローバーのMTと、整備士の手を焼いたトライアンフの燃料インジェクションという、お互いに至らない部分もある。だが、それぞれが持つ魅力は否定できない。
スコットランドのシングルモルトとバーボンのブレンド・ウイスキーのように、それぞれの香りと味わいで、素晴らしい時間を楽しめるとでもいえようか。楽しみすぎて、頭痛を誘う時があるかもしれないけれど。
ローバーとトライアンフ 2台のスペック
ローバーP6 3500S(1971〜1976年/英国仕様)のスペック
英国価格:1976ポンド(新車時)/2万ポンド(304万円)以下(現在)
生産台数:2715台
全長:4566mm
全幅:1676mm
全高:1422mm
最高速度:201km/h
0-97km/h加速:9.1秒
燃費:7.4km/L
CO2排出量:−
車両重量:1295kg
パワートレイン:V型8気筒3528cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:152ps/5000rpm
最大トルク:27.7kg-m/2750rpm
ギアボックス:4速マニュアル
トライアンフ2.5 PI Mk2(1969〜1975年/英国仕様)のスペック
英国価格:1595ポンド(新車時)/1万5000ポンド(228万円)以下(現在)
生産台数:4万9742台
全長:4632mm
全幅:1651mm
全高:1422mm
最高速度:172km/h
0-97km/h加速:11.5秒
燃費:7.7km/L
CO2排出量:−
車両重量:1255kg
パワートレイン:直列6気筒2498cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:125ps/5500rpm
最大トルク:21.1kg-m/2000rpm
ギアボックス:4速マニュアル