【詳細データテスト】メルセデス・ベンツEクラス・カブリオレ 実用4座 力強いエンジン 穏やかな走り

公開 : 2021.10.16 20:25

内装 ★★★★★★★★☆☆

ライバルの多くがこの10年ほどでカブリオレ市場から撤退した中、メルセデスはそれを造り続けたばかりか、先代Cクラスの生産が終わるまでは2車種を用意していた。Eクラスはそのうちの大きいほうなので、必然的に実用性でも上回る。

電動ルーフを搭載し、それをキャビンの背後にすっきり収めなければならないので、パッケージングは妥協が避けられず、同じEクラスでもキャビンはセダンほど広くない。それでも、後席は大人が乗るのに十分なスペースがある。

インテリアのデザインは、ライバルたちとの差別化が明確で、高級感も十分にある。運転環境もこの手のクルマに適したもので、操作性も悪くない。パフォーマンスのテストは秋雨の降る中だったが、これは英国でコンバーティブルを所有すると直面する現実を要約しているといえる。しかしこのクルマは、チャレンジをためらいなくこなした。  0−100km/hの公称タイムは6.6秒というが、この1780kgの後輪駆動コンバーティブルは、水が浮いた路面での0-97km/hで7秒フラットをマークした。グリップもトラクションも、4WDではやりすぎではないかと思えるくらいのものがあった。  走り出すと、期待通りのしなやかさで、じつになめらか。運転にも没頭できる。急き立てられる感じもぶっきらぼうさもなければ、トランスミッションもエンジンも印象は決して強くないのだが、遅さを感じさせることもない。  追い越し加速を試みて、スロットルペダルを軽く踏み足すと、低回転から豊富な駆動トルクが湧き上がる。しかも、エンジンが力を発揮する前には、マイルドハイブリッドの電気モーターがほぼ瞬時に動力を発生し、間をつないでくれる。  このエンジンの主な強みは、機械的な洗練性とドライバビリティだ。メルセデスはデジタル的にエンジン音を添加しているが、それが一番魅力的なサウンドではない。5000rpm以上回るが、そこは真価を期待するところではない。  そこそこハードに走らせても静かで、スムースで、しつけが行き届いている。この大きな質量のEクラスが十分すぎるほど威厳ある走りを見せ、これが下位グレードのエンジンを積んでいるということを忘れさせるほどだ。  9速ATのキックダウンがややスローに感じられ、シフトパドルを積極的に使いたいとは思わせないだが、変速そのものはスムースで、Dレンジに入れたまま速度を上げたいときにも適切にギアを選んでくれる。  対面通行の道でオーバーテイクをかけるような場面では、うまく順序立てて、あらかじめシフトダウンしてうまくこなしてくれる。だが、ゆったりと和やかに、楽しく流すような走りは、さらに申し分ない。しかも、うれしいくらいに燃費もいい。その点については、追って詳しく説明しよう。   雨天のテストでも、4WDでなくてもいいと思えるグリップとトラクションを発揮。エンジンは、モーターアシストの恩恵もあって、エントリーグレードであることを忘れさせるほど力強い。
インテリアのデザインは、ライバルたちとの差別化が明確で、高級感も十分にある。運転環境もこの手のクルマに適したもので、操作性も悪くない。パフォーマンスのテストは秋雨の降る中だったが、これは英国でコンバーティブルを所有すると直面する現実を要約しているといえる。しかしこのクルマは、チャレンジをためらいなくこなした。 0−100km/hの公称タイムは6.6秒というが、この1780kgの後輪駆動コンバーティブルは、水が浮いた路面での0-97km/hで7秒フラットをマークした。グリップもトラクションも、4WDではやりすぎではないかと思えるくらいのものがあった。 走り出すと、期待通りのしなやかさで、じつになめらか。運転にも没頭できる。急き立てられる感じもぶっきらぼうさもなければ、トランスミッションもエンジンも印象は決して強くないのだが、遅さを感じさせることもない。 追い越し加速を試みて、スロットルペダルを軽く踏み足すと、低回転から豊富な駆動トルクが湧き上がる。しかも、エンジンが力を発揮する前には、マイルドハイブリッドの電気モーターがほぼ瞬時に動力を発生し、間をつないでくれる。 このエンジンの主な強みは、機械的な洗練性とドライバビリティだ。メルセデスはデジタル的にエンジン音を添加しているが、それが一番魅力的なサウンドではない。5000rpm以上回るが、そこは真価を期待するところではない。 そこそこハードに走らせても静かで、スムースで、しつけが行き届いている。この大きな質量のEクラスが十分すぎるほど威厳ある走りを見せ、これが下位グレードのエンジンを積んでいるということを忘れさせるほどだ。 9速ATのキックダウンがややスローに感じられ、シフトパドルを積極的に使いたいとは思わせないだが、変速そのものはスムースで、Dレンジに入れたまま速度を上げたいときにも適切にギアを選んでくれる。 対面通行の道でオーバーテイクをかけるような場面では、うまく順序立てて、あらかじめシフトダウンしてうまくこなしてくれる。だが、ゆったりと和やかに、楽しく流すような走りは、さらに申し分ない。しかも、うれしいくらいに燃費もいい。その点については、追って詳しく説明しよう。 雨天のテストでも、4WDでなくてもいいと思えるグリップとトラクションを発揮。エンジンは、モーターアシストの恩恵もあって、エントリーグレードであることを忘れさせるほど力強い。    OLGUN KORDAL

もし、はじめてコンバーティブルに乗るなら、後席の絶壁な背もたれや、両脇が絞り込まれた空間に驚くだろう。乗員はやや中央寄りに座らされることになる。しかし、それを許容して、乗り降りの面倒さを無視しても、身体の小さい大人であっても快適に過ごせるのは短距離だけだ。

ルーフを閉じると、後席は閉塞感が強く、視界はかなり乏しい。さらに、吹き込む風に悩まされ、腹立たしく思うこともしばしばある。それでも、まずまずの広さがある。それだけでも、4座カブリオレとしてはレアだ。

前席は、2面ディスプレイのレイアウトやジェットエンジン風の送風口、上面を覆われたロータリー式のインフォテインメント入力デバイスなどが、メルセデスがその時点のインテリアデザインを超えようと躍起になっていた頃の作品であることを思い出させる。それらは、喜ばしい要素だ。

しかし、ダッシュボードや運転環境の見た目にも感覚にも、大きな間違いがないというのもまた事実だ。さまざまなシステムやテクノロジーを扱うのは簡単で、全体から魅力的な高級感が漂う。

ドライバーズシートは、使いやすい高さだ。走りにこだわるクルマなら、もっと低く座りたいところだ。しかし、スポーティさを追求しない高級クルーザーには、実用的な形状で快適なシートはぴったりだ。

ヒーターは内蔵するが、クーリングやマッサージはオプションでも用意されない。豪華でリラックスできるオープンカーには、設定してほしかったアイテムなのだが。

積載性についていえば、トランクルームはワイドで奥行きもあり、そこそこ大きいスーツケースふたつと、ひとつかふたつのソフトバッグを積み込めるだろう。ただし、この手のコンバーティブルの宿命として、ルーフをたたむとかなりの容量が食われてしまう。高さ方向は250mmも侵食されるのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター

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