【サーキット指向のポニーカー 】フォード・マスタング・マッハ1へ試乗 460psのNA V8
公開 : 2021.10.24 08:25
一般道でのマナーの良さに感心
V8エンジンは、速度域に関わらず騒々しい。アイドリング状態でも周囲を威嚇するような迫力があり、レッドライン目掛けて回転数を高めれば、轟音を周辺に撒き散らす。
変速はレブマッチ機能で滑らか。不要なブリッピングもない。シフトノブの動きには、素晴らしく正確な感触がある。
ターボチャージャーで過給されるエンジンのような、低回転域からのトルクはない。だが加速は線形的でたくましい。アクセルペダルの操作に対し、完全に一致した勢いを生んでくれる。
V8エンジンとマスタングという組み合わせは、多くの人にとって魅力的なもののはず。マッハ1でも、それは変わらない。
さらに感心させられたのが、一般道でのマナーの良さ。チューニングの洗練度を確かめるのに、ギリギリまで攻め込む必要はない。最も快適なモードを選んでいれば、アダプティブ・サスペンションは英国の殆どの路面を上手にいなしてくれる。
高速道路との相性もバッチリ。リラックスしたクルージングに浸っていられる。
スポーティなモードへ変更すれば、郊外の路面の悪さをつぶさに感じ取ることができる。舗装したての道を積極的に走れるような状況でない限り、切り替える必要はないだろう。
活発に走らせれば、そのぶん燃費は著しく悪化する。サーキット走行を楽しんだ後にガソリンを満タンにし直したら、走行可能な距離は133kmと表示されていた。
NA V8エンジンを楽しめる最後のフォードか
インテリアは、マスタングGTと大きな違いはない。アルミニウムの内装トリムが追加され、ビリヤード・ボールのようなシフトノブが与えられる程度。メーターパネルはモニター式だが、昔ながらのアナログメーター風グラフィックを上手に融合させている。
ダッシュボードには実際に押せるハードスイッチが沢山並び、シンク3で動くインフォテインメント用タッチモニターのサイズは小ぶり。グラフィックもベーシックだ。観察してみると、硬質なプラスティックが多く用いられていることもわかる。
車内は広々としており、大人4名での移動が可能な空間がある。荷室容量も充分。だが、英国価格5万ポンド(760万円)以上のスポーツカーに期待する通りのインテリアとは、いえないかもしれない。
各所にチューニングが施されたマスタング・マッハ1。サーキットを走らなくても、一般道でその進化ぶりは体感できる。マッスルカーとしての魅力が損なわれてもいない。
フォードはPHEVと純EVの販売で、モデル平均でのCO2排出量を減らしている。それでも、自然吸気のV8エンジンを楽しめる最後のモデとなる可能性は高い。新車で購入できるNA V8のスポーツカーは、既に希少だ。
誘惑されたのなら、今のうちに入手しておくべきだろう。通常のマスタングGTより約1万1000ポンド(167万円)高いマスタング・マッハ1を購入したのなら、時々はサーキットを走らせて、マッスルカーの真価を発揮させて欲しい。
フォード・マスタング・マッハ1(英国仕様)のスペック
英国価格:5万5255ポンド(839万円)
全長:4784mm
全幅:1916mm
全高:1381mm
最高速度:267km/h
0-100km/h加速:4.8秒
燃費:8.1km/L
CO2排出量:284g/km
車両重量:1754kg
パワートレイン:V型8気筒5038cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:460ps/7250rpm
最大トルク:53.8kg-m/4900rpm
ギアボックス:6速マニュアル