【電動のネオクラシック】エリーゼ・ベースのテスラ・ロードスター 先進企業の起源 前編

公開 : 2021.10.31 07:05

エリーゼの派生モデル感が漂う見た目

その1つが、乗降性を良くする目的でサイドシルの高さを下げたこと。シャシーのサイドレールは乗員空間の後方で切断され、ホイールベースが2インチ伸ばされている。

カーボンファイバー製のボディは、フランスの企業が製造を請け負った。だがデザインを担当したのは、ロータス・デザイン部門のバーニー・ハット氏だ。

「当初、ボディの一部はエリーゼから流用されると考えていました。独自部品のデザイン・コストは、手強いものになりますから。しかしイーロン・マスクは弱気な考えをしないよう、われわれを説得したんです」。と、エバーハードが後に振り返っている。

最終的に完成したロードスターは、巧妙にデザインされているが、エリーゼの派生モデル感が残る。造形的に抑揚の強いエリーゼ・シリーズ2と比べると、スタイリングはクリーンで現代的だ。全長がプラスされ、落ち着いた雰囲気がある。

ホイールアーチのサイドマーカーと、少し長めのインパクト・バンパーを装備し、北米市場を強く意識していることは瞭然。灯火類もテスラのオリジナルで、見える殆どがエリーゼとは異なる。

改良されたアルミ製サブフレームには、駆動用のリチウムイオン・バッテリーを搭載。駆動用モーターは、三相AC誘導モーターで、大きさはサッカーボール程度だという。重量が増え、サスペンションの構造はそのままながら、強化されている。

シャシー製造はエリーゼと同じラインで

エリーゼの技術を利用することは、生産スピードの面でも、北米市場での認可の面でも、理にかなっていた。エアバッグやABS、クラッシュ構造などには手が加えらておらず、そのまま認証を受け継ぐことができた。

テスラ社創業から3年後の2006年7月、最初のロードスターがカリフォルニア州サンタモニカ空港でのイベントで関係者にお披露目された。11月のサンフランシスコ・モーターショーでは、9万8950ドルの価格を付けて、一般公開された。

ロードスターのシャシーは、エリーゼやエキシージと同じ生産ラインで、英国・へセルの工場で製造。北米仕様はボディが載せられた状態でカリフォルニア州サンカルロスへ運ばれると、テスラ社製のエネルギー貯蔵システム(ESS)が搭載された。

最初のオーナーはマスク氏と決まっていたが、実際に納車されたのは発表から1年以上空いた2008年2月。英国市場向けの右ハンドル車はすべてロータスで仕上げられ、2010年に発売されている。

電気自動車がまだ珍しい存在だった時代に、ロードスターは間違いなくニッチ・モデルといえたが、バッテリーで320km以上という航続距離は画期的と呼べるもの。テスラは最短3.5時間で、最長392kmぶんの電気を充電できると主張した。

ジョージ・クルーニー氏とアーノルド・シュワルツェネッガー氏も早々にロードスターをオーダー。テスラへの注目を集めることに一役買っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アラステア・クレメンツ

    Alastair Clements

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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