【電動のネオクラシック】エリーゼ・ベースのテスラ・ロードスター 先進企業の起源 後編

公開 : 2021.10.31 07:05

電気自動車と自律運転を牽引するイメージを持つテスラ。その起源は、ロータスをベースとした小さなロードスターでした。英国編集部がその1台へ試乗しました。

アルピナB12を手放しロードスターを購入

執筆:Alastair Clements(アラステア・クレメンツ)
撮影:Will Williams(ウィル・ウイリアムズ)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
英国でルイス・ブラック氏とともにテスラ・ロードスターを販売してきた、ドリュー・ウィーラー氏が話す。「英国は電気自動車の普及が遅れていました。ですが近年、急に光が差したように熱くなってきましたね」

「テスラ・ロードスターは、最初の電動クラシック・モデルになると考えられ始めています。ただ、欲しいと思って探しても市場規模は小さい。ロードスターの右ハンドル車は非常に限られます」

テスラ・ロードスター(2008〜2012年/英国仕様)
テスラ・ロードスター(2008〜2012年/英国仕様)

「ワンオーナー車のロードスター・シグネチャー250という例では、現在の価格は6桁ポンド(1550万円)に接近しています。市場は加熱したままで、減速感はありません」

この人気に気を良くしている1人が、ライトニング・グリーンが眩しい2010年式ロードスターを、半年前に手にしたドリュー・ファーガソン氏。年金をつぎ込んで購入したという。

このロードスターも、初期に生産された250台の1台。シグネチャー250だ。アルピナB12を手放して、ガレージに収めることにした。以前には、BMW 3.0 CSLも所有していたことがあるそうだ。

「このクルマが存在していたことすら、出会うまで忘れていました。BP社で働いていた時に会社の駐車場で目にし、所有したいと考えたんです。人とは違った変わったクルマを、好んで今までも乗ってきましたから」。ファーガソンが笑う。

「バッテリー交換は前提でしたが、PEMという部品が壊れると知り調べました。半年ほどかけて、ルイスに辿り着き相談。このロードスターを選んだのは、色が気に入ったからです」

パフォーマンスは今でも凄まじい

テスラの起源といえるクルマ。パフォーマンスは今でも凄まじいですよ。一般的に速いといわれるモデルも所有してきましたが、これは違います。一切遅れがない。アクセルペダルを倒したら、あっという間に5台追い越せる、そんな加速です」

「信じられないほど速く走りますが、スポーツカーとしては良くないとも思います。おもちゃ的とでもいうべきか」。航続距離的が理由なのか訪ねたが、そうではないという。

テスラ・ロードスター(2008〜2012年/英国仕様)
テスラ・ロードスター(2008〜2012年/英国仕様)

「バッテリーの寿命は約10年といわれてきましたが、管理が悪くなければ、寿命の6%から12%ほどしか消耗していないことがほとんどです」。と、ルイスが説明する。

ファーガソンのクルマも航続距離は落ちていないようだ。「フル充電で走れる距離は350kmくらい。充電プラグが旧式で、最新のテスラの急速充電器、スーパーチャージャーには非対応。長距離旅行を楽しむかどうかは、これから考えます」

「長い旅行をするには、事前に充電計画を立てなければなりませんから」。それでもクルマへの愛着は深まっていると、ファーガソンは話す。一緒に暮らすのも、難しくはないらしい。

「オーナー間のつながりが素晴らしい。問題が出てきても、情報を共有して助けてくれます。注意を払っていれば、バッテリーも駄目にはなりません。気を掛けるのが手間なら、選ぶべきクルマではないでしょうね」

ファーガソンが続ける。「ロードスターから離れていても監視できるように、スマホのアプリをダウンロードしました」。クラシックカーの管理にアプリ。違和感があるが、時代が進んだ証拠だろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アラステア・クレメンツ

    Alastair Clements

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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