ロータス・エリーゼ シリーズ1かシリーズ2か ヘセルを救った傑作スポーツ 前編
公開 : 2021.11.06 07:05
基本へ立ち返った設計に、軽さを加える
ロータスを救ったスポーツカーは、イノベーションで支えられつつ、基本に立ち返った設計が施されている。一読すると、矛盾しているようだけれど。
設計に関わったのは、アルミニウムの押出成形や接着構造のパイオニアといえる、技術者のリチャード・ラックハム氏。この構造は軽量に仕上がり衝突安全性を確保できるという、大きなメリットがあった。
グラスファイバー製のボディをマウントする設計は、クラッシャブルゾーンを生む役目も果たしている。驚くほど見事に機能している。
マイナス点として残ったのは、高く幅の広いシャシーレールがボディサイドに延び、足を大きく持ち上げて乗り降りする必要があること。優雅に乗る手順を覚えれば、美しいアルミ構造の上部に取り付けられたペダルへ、自然につま先が導かれる。
そのレイアウトは完璧。シフトダウン時のヒール&トウを練習する環境が、標準装備といえる。
サスペンションのマウント部分も、押出成形のアルミ材。ステアリング・コラムのブラケットも同様だ。
インテリアは、車重を抑える目的のために極めて質素。簡素なドアパネルが付き、少しのパッド類が施されている。発売当初からカテゴリーの中心的存在となり、多くのリスペクトを集めてきた理由を体現している。
比べると、初代マツダMX-5(ロードスター)ですら豪華に感じる。エリーゼが忠実に守ったことは、ロータスを創業したコリン・チャップマン氏の「軽さを加える」という哲学だった。
明確に意図的なコクピットの雰囲気
シンプルなステアリングホイールは、初代エランから借りてきて、現代的に手を加えたかのよう。浅いダッシュボードのベースにも、フラットなアルミが露出している。
肉薄なバケットシートは身体を包んでくれるが、ほとんどクッションがない。1990年代のプジョーやオペルに見られるようなスイッチ類が並んでいる。ボディの見た目と同様に、コクピットの雰囲気は明確に意図的。エリーゼに惹き込まれてしまう。
シートは前後にスライドするが、背もたれはリクライニングできない。高いサイドシルに包まれ、エリーゼと一体になったような感覚がある。お尻は路面から20cmくらいという近さだ。
キーを捻って個性的なエンジンサウンドが聞こえ出すと、不思議と落ち着いた気持ちになる。気持ちを鼓舞するものでも、耳をつんざくものでもない。
メカノイズを確かめながらギアを1速に入れ、小さなクラッチペダルを踏む力を緩める。アクセルをほんの数cm倒す。ドライバーズシートからの視界は広々。無垢なメーター類が目線の下に掛かる。
初期のエリーゼのコードネームはM111。モデル名は、当時のブガッティ・オーナー、ロマーノ・アルティオーリ氏の娘、エリサが由来となった。そんなエリーゼ・シリーズ1は、誕生直後から多くの派生モデルが展開される。
この続きは中編にて。