ロータス・エリーゼ シリーズ1かシリーズ2か ヘセルを救った傑作スポーツ 中編

公開 : 2021.11.06 07:06

GMに協力を仰いだロータス

マクステアが続ける。「MMCブレーキも備わっています。アルミとセラミック素材を複合したもので、アメリカのランキシド社によって鋳造され、ハイドロリクス社でマシン加工されたディスクです」

「ステルヴィオ峠でのテストでは、16万kmの寿命があると証明されています。制動力は非常に強く、サーボも必要ありません。ただし高価。ロータスらしく、コストに関係なく初期のモデルへ搭載されています。その後、鋳鉄に置き換わりましたが」

ロータス・エリーゼ・シリーズ2 SC(2007〜2011年/英国仕様)
ロータス・エリーゼ・シリーズ2 SC(2007〜2011年/英国仕様)

ロータスの計画では、当初の4年間で3000台が売れれば御の字だった。初年度の想定は、たった400台。しかし21世紀が始まるまでに、1万台の注文をエリーゼは集める。

1996年、倒産しつつあったブガッティはロータスの存続を目的に売却を決定。それも、オーダーを集める要因となった。

しかし、最も磨き込まれた手頃なスポーツカーを持ってしても、ロータスは経営的な問題から脱却できなかった。価格が手頃過ぎたのかもしれない。遥かに高価なモデルでも、並ぶことができない喜びを与えてくれるのだから。

エリーゼ・シリーズ1の登場から数年後、ロータスはアメリカのジェネラルモーターズ(GM)へ協力を仰ぐ。ラックハムが設計したロータスのシャシーを利用し、オペル・ブランドからもスポーツカーを販売することで、エリーゼのアップデートを図った。

2000年に発表されたシリーズ2

ロータスの工場は近代化され、エリーゼの生産ラインの隣にオペル・スピードスター(ヴォグゾールVX220)の生産ラインが準備された。部品共有の割合は10%以下といわれ、部品番号も異なる。

シャシーはかなり近似しているが、アストラ用の2.2L 4気筒エンジンが収まるようにホイールベースは伸ばされ、トレッドも拡大。サイドシルは低くなり、荷室容量も大きい。

イエローのロータス・エリーゼ・シリーズ1と、オレンジのエリーゼ・シリーズ2 SC
イエローのロータス・エリーゼ・シリーズ1と、オレンジのエリーゼ・シリーズ2 SC

一方で初代エリーゼの設計は1990年代初頭。クラシックなロータス製モデルなどが参考にされており、近代化は避けられなかった。そして2000年、バーミンガム・モーターショーでシリーズ2が発表される。

当時のAUTOCARでは、「新しいエリーゼ誕生」という見出しとともに華々しく伝えた。スティーブ・クリンズ氏が手掛けたデザインは、20年経った今でも古びない。むしろ最新のエミーラにすら、その影響を観察できるほど。

2011年には一般的にシリーズ3と呼ばれるエリーゼが登場するが、ロータス内部ではシリーズ2.5と呼ばれるアップデート版。基本構造は完成の領域にあり、20年間、細かな改良のみで対応が可能だったといえる。

シリーズ2は、フルサイズのクレイモデル(デザイン検討用の粘土モデル)に加え、コンピューターを用いてデザインされた初めてのロータスでもある。シャシーレールに内装トリムが組まれる仕様は、オペルがスピードスターに要求したものだった。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・フィリップス

    Jack Phillips

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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