ロータス・エリーゼ シリーズ1かシリーズ2か ヘセルを救った傑作スポーツ 後編
公開 : 2021.11.06 07:07 更新 : 2021.11.06 08:17
ロータスの再生を象徴したモデル、エリーゼ。誕生から25年が過ぎ、クラシックとしての道を歩み始めたスポーツカーを英国編集部が堪能しました。
ドライバーに優しいシリーズ2のSC
2000年に発表されたロータス・エリーゼ・シリーズ2。従来までの包まれ感を失うことなく、乗降性は大幅に改善された。ダッシュボードも一気に現代化され、シートは快適で長時間のドライブも許してくれる。
運転席からは、高い位置のホイールアーチ越しにヘッドライトの峰がわずかに見える。他のモデルで見覚えがあるエアコンの送風口が、車内に4つ並ぶ。シフトノブはアルミニウム製。現代にも通じる雰囲気だ。
安全性が高められたダッシュボードの下側には、カップホルダーさえある。「でも、ラジオは必要ないですけどね」。と言葉を漏らすのは、オレンジ色のシリーズ2を所有するマイケル・ギャラガー氏だ。
エリーゼSCで、自然吸気ではなく、スーパーチャージャーで過給されている。エアコンやパワーウインドウなどの快適装備で増えた車重を、馬力で覆い隠すように。
「エリーゼを購入した時から、オーナーズクラブのメンバーです。このクルマはインターネットに載っていて、現物は見ずに2009年に買いました。2008年式なので、1年落ちの状態で」
「購入時の走行距離は1万4000kmほど。現在は3万kmを超えたくらいです。乗るのは近所のみ。動力性能には大きな違いがあります。トルクが太く、歳を重ねたわたしには魅力的な仕様ですね」。ギャラガーが笑う。
この過給エンジンは、エリーゼを別物へ生まれ変わらせた。完璧ではないかもしれないが、より乗りやすくドライバーに優しい。
ヨーロッパSやエヴォーラに展開
シリーズ1から登用されていたローバー社製のエンジンは、2003年に引退。エスプリの後継モデルの予定はなく、アメリカ人はエリーゼの導入を待っていた。
ロータスの伝説的技術者、ロジャー・ベッカー氏もエンジンの変更に賛同。マレーシアのプロトン傘下に収まるなかで、乗り気ではなかったトヨタを説得し、セリカ用1.8L 4気筒エンジンと6速MTの導入が決まる。
2004年にトヨタ社製ユニットはすべてのエリーゼへ搭載されるようになり、翌2005年に北米での販売がスタートした。それまでエアバッグが標準ではなかったこともあり、アメリカでは正規に購入することはできなかったのだ。
シリーズ2のエリーゼ誕生で、ロータス・モデルは複数に拡大。特別仕様がリリースされ、エキシージの上位モデルとしてヨーロッパSが誕生。4シーターのエヴォーラと、スパルタンなツー・イレブンも生み出された。
商業的な面で最も影響が大きかったのは、やはりイートン社製のスーパーチャージャーを載せたエリーゼSC。車重は1tを切るほど軽量なままで、0-97km/h加速を4.3秒でこなした。最高速度は241km/hとなり、オリジナルのシリーズ1より38km/h高い。
トルクが増えるということは、変速の回数が減るということ。ダルに感じることなく、アクセル操作で素早くスピードを高められる。選ぶべき段数に気を取られることなく、コーナリングラインに集中できる。
ストレートを加速させれば、スーパーチャージャーの唸りが響く。これも一興だ。