【詳細データテスト】ルノー・アルカナ 意外な広さ ハイブリッドは燃費良好 質感と快適性には妥協も

公開 : 2021.10.23 20:25

結論 ★★★★★★★☆☆☆

初見では、アルカナは流行りのクロスオーバークーペとして、十分な成功を収められるとは思えなかった。というのも、そのデザインにも、内装の質感のレベルにも、そしてパフォーマンスにも、とくに際立ったところがなかったからだ。

背の高い、実用性重視のクルマとしてみれば、ハンドリングはそこそこ鋭い。しかし、そのために乗り心地の快適性は多少なりとも犠牲になっている。

結論:派手なスタイリングをじつにうまく着こなしている。とはいえ、驚かされるところのないクルマだ。
結論:派手なスタイリングをじつにうまく着こなしている。とはいえ、驚かされるところのないクルマだ。    OLGUN KORDAL

インフォテインメントは妥当だが、それ以上ではない。装備面を見ると、有用な安全装備の中には上位グレードでないと設定されてないものがいくつかある。

それでもアルカナは、ルノーが長年にわたりスコダの独壇場だった分野に切り込む契機となった。それは、あるクラスのプラットフォームをベースに、1クラス上の競合モデルと渡り合える実用的なスペースを持たせ、しかも引きがある価格設定をするクルマ造りだ。

そうした視点で判定すれば、アルカナは最初の印象よりもう少し魅力的なクルマに見えてくる。後席と荷室には広い空間があり、長距離での快適性は良好。斬新でかなり巧妙なハイブリッドシステムにより、すばらしい経済性も実現している。

そのデザイン的なポジショニングを考えると皮肉なことだが、アルカナは、エモーショナルなクルマというより、合理的な選択肢としてのほうが評価できる。自動車史に新たな1ページを刻むかと問われれば、それは難しいと言わざるをえない。むしろ、ごちゃ混ぜ感のほうがずっと強い。

担当テスターのアドバイス

イリヤ・バプラート

アダプティブクルーズコントロールを切っていても、ドライバーズディスプレイには先行車との車間が、秒数で表示される。玉突き事故防止のためにも、車間を詰めすぎるドライバーへ、車間距離がいかに近いか教えてくれるこうした装備は歓迎したい。

マット・ソーンダース

BMW X4風のスタイリングで目を引こうと相当努力したのは認めるが、個人的には普通のクルマに見える。実用性は低いが、ルックスだけならトヨタC−HRに1票を入れたい。

オプション追加のアドバイス

中間グレードのSエディションがおすすめ。ディスプレイは大きいほうになり、安全装備も充実する。下位グレードのアイコニックと違って、選べるオプションも多い。RSラインにスポーティなスタイリングで、他グレードのオプションアイテムのいくつかが標準装備される。

改善してほしいポイント

・インテリアをもっと明るい雰囲気に。おもしろみのあるダッシュボードと、もっとうれしくなるような素材遣いをしてくれたらなおよし。
・リアワイパーを付けてほしい。
・もっとパワフルなモーターを積めば、ドライバビリティが全般的に改善されるはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。

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