【詳細データテスト】ルノー・アルカナ 意外な広さ ハイブリッドは燃費良好 質感と快適性には妥協も

公開 : 2021.10.23 20:25  更新 : 2021.12.21 15:49

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

正面から見ると、ルノーファミリーの見慣れた顔つきだが、横に回るとルノーらしさは薄い。テスター陣はひとりならず、視点によってBMW X4の影響を感じられるという感想を抱いた。

発売までの経緯も、これがまたややこしい。ルノーは2019年にロシアでアルカナを発売した。このロシア仕様はルックスこそ今回のテスト車と変わらないが、インテリアは廉価ブランドのダチアに近いレベル。というのも、ベースがより設計年次の古いダチア・ダスターに用いられるB0プラットフォームだからだ。

ルノーにいわせれば、Eテック・ハイブリッドシステムの利点のひとつがコンパクトさだということになるのだが、アルカナのエンジンルームはかなりタイトなパッケージングにみえる。1.6Lガソリンエンジンと、ハイブリッド関連の電気系がギッチリと詰め込まれている。
ルノーにいわせれば、Eテック・ハイブリッドシステムの利点のひとつがコンパクトさだということになるのだが、アルカナのエンジンルームはかなりタイトなパッケージングにみえる。1.6Lガソリンエンジンと、ハイブリッド関連の電気系がギッチリと詰め込まれている。    OLGUN KORDAL

いっぽう、英国や欧州本土で販売されるアルカナは、現行キャプチャーのベースであるCMF-Bをストレッチして使用。より新しいプラットフォームやコンポーネンツを使ったことで、乗り心地やハンドリングの洗練度が高まっていると予想される。

現行のキャプチャーやルーテシアと同じく、リアサスペンションはトーションビーム。そう聞いてちょっとガッカリするかもしれないが、そうだとしたら思い出してほしい。その兄弟分たちが、各々のセグメントでトップクラスの運動性能を発揮しているという事実を。

アルカナが設計面で、より小型のキャプチャーと密接な関係にあることを考慮すれば、生産はスペインのバリャドリッド工場だろうという推理をするだろう。ところが、このクルマを製造するのはルノー・サムスンの釜山工場、すなわち韓国製だ。そして韓国市場には、サムスンXM3として昨年から投入されている。

サムスンと聞くと、スマホや家電を作っている電機メーカーを思い浮かべるだろう。実際、創業したのは同じサムスングループで、最近までこの財閥の系列企業が株式の一部を保有していた。とはいえ、2000年の経営破綻時にルノーが全株式の80.1%を取得しており、実質的にはルノーの韓国部門となっている。

エンジンのラインナップもまた、同じプラットフォームのモデルたちとは異なり、2機種のみを展開する。ひとつが140psの1.3L直4ターボガソリンで、これはルノーとメルセデスが多くのモデルに設定しているパワーユニットだが、アルカナにはマイルドハイブリッドアシストが付加されている。とはいっても、12Vシステムで、エンジンを切った際に補器類へ電力を供給するにすぎない。

もうひとつが、今回テストするEテック・ハイブリッド145で、ルノーの最新電動パワートレイン群に属するフルハイブリッドシステムである。自然吸気の1.6L直4に、大小ひとつずつのモーターを組み合わせ、大きいほうは駆動用、小さいほうはスターター/ジェネレーターとして使用。トランスミッションは、ノンシンクロの4速クラッチレスギアボックスだ。

ドライブトレインとの接続を断つためには、エンジンをニュートラル状態にしなければいけないので、発進は必ず電力で行われる。そのためにはバッテリーの十分な充電量が必要なので、エンジンは接続を切られているときでも、発電のために回すことができる設計だ。

いっぽうで、一般的なクラッチを用いなくても変速できるように、ギアボックスにはシンクロメッシュではなくドグクラッチが与えられる。さらにスタータージェネレーターを増減速することでクランクシャフトの回転速度を調整し、ギアがスムースにつながるよう回転合わせをする。

ルノーのEテック・フルハイブリッドに用いられるモーターは、プラグインハイブリッド版の65psより低出力な49ps仕様。駆動用バッテリーも1.2kWhと、PHEVの9.8kWhよりだいぶ容量が少ない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。

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